3月29日内閣府より昨年暮れに行われ、回収された僅か3000余りの世帯調査による「高齢ひきこもり実態」の発表と、その大本営発表に対する報道各紙の姿勢や分析(と呼べるのかどうか)について、8050問題解決塾、および株式会社現代問題研究所は、内容を精査した後に、私どもの見解と、社会問題の偽装実態などを追及する方針です。

もっとも、各新聞社は現在販売部数を大幅に下げており、公称販売部数でも朝日新聞ですら600万部を切っている状態で、全世帯数の一割にも満たない数になっていますし、特に日本経済新聞は知名度はさることながら、事実上企業のコマーシャルペーパーに成り下がっているという現実を考えると仕方ないのかもしれませんが、あまりにもお粗末な公表数字とやる気のなさに愕然としているのが偽らざる心境です。

一例だけ上げて申し上げますと、日経のWEB配信記事においては、高齢の引きこもりになった理由の36%が退職が理由であるかのように書き、あたかも、全国61.3万人の引きこもりの最大の理由であるかの印象を見せていますが、実際には「人間関係がうまくいかなかった」「職場になじめなかった」の合計は40%を突破しており、この二つの項目の明確な差がない以上、最大要因は当塾及び当研究所が分析している「コミュニケーション能力の欠如」が引きこもり最大の要因であることと矛盾しません。

しかしながら、この原因調査は61.3万人に対して行われたものではなく、日経では割合表記されているのに対し、毎日新聞では絶対数表記されており、日経もよく読んでみると、有効回答3248人の1.45%を「ひきこもり認定」しているだけで、その数はわずかに47人であることがわかります。つまり、60万人超の原因分析を50人に満たない、性別も学歴も世代もバラバラの人に行っていて、その数値をさも有意なものであるかのように発表し、それを受けて新聞報道している時点で、そうとうおかしな国になっちゃってるな、感を禁じえません。

四半世紀にまたがり、男女の別もある時点で、すでにこの47のサンプルはサンプルとして、もともとは無作為抽出で選ばれたものであったとしても、均一なばらつきとは程遠いものであって統計学的に限りなく無意味に近い数字でもあり論評に値しないとも思われます。またこの数値の中には、当研究所が提唱しているように「隠居生活」も含まれていると考えられ、本当に支援を必要としている人たちの代表と言えるのかも大いなる疑問です。

少なくとも私どもが接してきた3ケタの人たちも、各人が各人の事情でひきこもり生活を余儀なくされているので、こんな世代も性別も、感情も常識もビジネススキルもバラバラの47人に国家の一大事を背負わせて良いものだとは到底思えません。しかも発表のタイミングを新年号発表の直前に持ってきたあたりに作為的なものを感じざるを得ません。いずれにせよ、ある程度悪いデータが出ることが事前に想定できていたにも関わらず、各報道機関であるべきところの報道姿勢には非常に幻滅を感じました。感想は以上にして、今後、精査した見解については徐々に発表してまいります。