8050問題においては高齢ニートとの接触から、「幸せな状態になってもらう」ことが最優先なのですが、お問い合わせいただく方から、「まず親と会って欲しい」とか、「暴力を振るうので危険だからあわせられない」と言われることが多く「めんどくさいなあ」と思ってしまいます。前者の話は次回にして、今回は、ニート、パラサイト、ひきこもり、8050問題とDVについてお話します。

ニートのDV率は5割超

さて、ひきこもりやニートのDV(家庭内暴力・ドメスティック・バイオレンス)率はどのくらいなのでしょうか? 様々な統計がありますが、実感的には概ね7割超あります。

精神科医などが出している統計では4割程度のものもありますが、私どもに持ち込まれる事案は、「こじれたニート」なので、DV率が高いのかもしれません。なお、私どもが定義しているDVは、親に対して傷が残るような暴力を振るうこと、だけではありません。

親を刃物で刺してくるようなニートはほとんどいません。突然金属バットで殴るようなこともしません。たいていはポーズだけです。たとえば、包丁をダンボール箱にブスブス刺す、とか、ものを投げつける、とかです。

あるいは、親に対して「死ね」とか「殺すぞ」と脅したり、逆に「死んでやる」と言って、風呂場でリストカットやアームカットしたりすることもあります。首吊りの真似事をして、本当に死にかけたり、死んでしまうこともあります。

ものを壊したり部屋で暴れたり、というのもいくらもあります。しかし、いずれの行為も親から見れば恐怖を感じるわけですが、それが目的ですから、恐怖を感じない場合には、行動がエスカレートしていきます。

ただ、DV行為をするのは健康である証拠です。DV行為をしなくなってしまったニートは、生きることをあきらめてしまっている可能性があります。そちらのほうが本当は危険なのです。

なぜDVに走るのか。理由はコレ

ニートやパラサイトがDVに走る理由は大きく2つあります。3つと言ってもいいですが。まず一個目、これは親から金を引き出すための脅迫です。この場合は親子関係自体が不健康なので、ぜひ、修正してください。

脅迫を受けてお金を出すようになると、その脅迫は何十回でも繰り返されますし、どんどんエスカレートしていきます。また、どんどん多額の金を請求するようになります。脅迫には絶対屈してしまってはいけません。これは他人でも同じことです。脅迫をされたら、迷わず警察を呼びましょう。

多くのニート、パラサイトが親に対してDVをふるう理由は、「不甲斐ない自分に不満があるから」です。「満たされない自分」を満たすために、誰かに八つ当たりするしかない、それが理由の一つです。

本来は、「不甲斐ない自分」を変えていく努力をしないといけないのですけれども、「不甲斐ない自分」にされてしまったのは親の責任だ、と意識をすりかえることで、逃避しているのです。

弱い人間はニートやパラサイトになるわけですが、弱い人間であるがゆえに、自分に勝つことができず、すべての不幸は他人の責任、というでたらめな理論を作り出すのです。

もっとも、あながち親が加害者、というのも間違っていない場合があります。これは2種類のケースです。1つ目は、校内暴力などイジメにあっていた時代に、親が助けてくれなかった、という場合です。親の監督責任を問うてるのです。

もう一つは、親の望むままに(自分の希望は踏みにじられて)、一生懸命受験勉強したのに、就職がなかったり、就職してもリストラされたり、ブラック企業すぎて身体を壊してしまったり、といったような場合です。

自分の人生を狂わせたのは親だ。だから、親は自分を一生面倒見るべきだ。これはある意味正しいのです。本来は親は、小学校高学年くらいになったら、もう一人前の大人として扱い、子供自身に人生を選択させるようにしないといけない。

ところが、今の親たちときたら、子供が大学生になっても一緒にお風呂に入ったり、大学の入学式のみならず、会社の入社式にまで親がついてくる。私達の時代に親が大学の入学式に来る、なんてことはありえなかったのですが、犬に服を着せる時代にはいろいろかわるわけです。

あげく、結婚相手にまで口出したり、交際相手をディスったり、30歳すぎまで結婚相手について文句を言っていたくせに、35歳にもなって、まだ結婚しないのか、と豹変されてはたまったものではありません。

成人した子供にまで過保護過干渉をしてきた親は、責任を持って、子供が死ぬまで面倒をみるべきだ、と私も思います。もちろん、それが難しいこともわかりますし、そうしたくない、という都合も理解します。

子供の自立を促して欲しい、という業務を委任された場合は粛々とそれを実行しますが、私どもはニートさんの気持ちに寄り添う立場ですので、親に対して反省を促すことも契約条件となります。子供は親のおもちゃではないのです。

イジメに関しては、傍観者もイジメに加担した人間にしか見えない。これはイジメられた人全員がそう感じています。積極的に救出してくれる人以外は、すべての大人までがイジメている、そう認知します。

イジメを助けてくれなかった。だから、今の自分が情けない状態にあるのは親のせいだ。だから親に自分の苦しみを理解してもらうために暴力をふるうのは当然だ。そういう意識があることをご理解ください。

救出支援者が暴力をふるわれる条件

救出支援者が暴力を受けることがあるのは事実です。それは、親の紹介で会いにいくと、「親の一味」に認知されますから、親に対する暴行と同じような暴行を受けてしまいます。

それを「この人は違うみたい」「助けてくれるのかもしれない」と意識を変えてもらうのにはすごく無駄な時間がかかってしまいます。ですから、親御さんにあってしゃべる時間というのが、ものすごくもったいないのです。

ニートさんは、親から受けた精神的ダメージを引きずっていることが大半です。ただ、それは、親から見れば些細な出来事であり、特に高齢の親は全く記憶していない場合もありがちなのです。ですから、親に、子供のひきこもり理由を聞いても本当に無意味なんですね。

まあ、私どもにお金を支払ってくださるのは親御さんがほとんどなので会わないわけにはいかないのですけれど、正直時間の無駄とやるせなさがないまぜになるのです。