80世代が異星人だったのは今にはじまったことではありません。50年以上前から「変な人」「困った人」だったのです。コミュニケーション能力は無きに等しく、現代では全く通用しない人たちなのですから、50世代に限らずすべての世代の人たちが昭和ヒト桁に代表される80世代とうまくコミュニケーションできないのは当然なのです。

親子同居拒絶のパイオニア

だいたい30年くらい前でしょうか? 相続税対策も兼ねて、二世帯住宅というものがものすごく流行った時期があります。わざわざ、まだ住める、それほど古くない家を壊して、60代の親が1階、30代の子供夫婦が二階、というように、2つの家族がそれぞれ階を隔てて住めるような木造住宅が田園調布や落合のような高級住宅地にボコボコ建ちましたが、ほとんど大失敗しています。

中には、親がまだ若いうちは二階に住み、階段を登るのが辛くなったら、一階に住めるように、などというファンタジーを信じ切って、あとから手を入れられるように、という家を立てた人たちもいますが、結局物がたくさん置かれてしまうと、いまさらそれを動かすのもたいへん、ということで、でも二階には上がれない、ということで施設に入ってしまうこともあります。

そもそも80世代こそ、現代の核家族、少子化問題の原因を作ったパイオニアなのです。「世代が違う親と意見があうわけがない」と家を飛び出し、東京に出て、恋愛結婚をし、人口増加の波にのって出世したり金持ちになり、郊外に家を買って住み、しかし、実の親は施設に放り込んで時々見舞いにいくだけ、というパターンを作ったのはこの世代の人たちなのです。

半年に一度しか会わない親子

実際にはほとんどの場合は親が一階に住んでいることが多く、二階からの物音がするので、どうやら生活しているらしい、というのはわかるのですが、玄関が別々にあるような家だと、半年に一度程度しか会わないような家も珍しくはありません。

「たまには外に飯でも食いに行くか」と誘うことで、一つ屋根の下に住んでいるにもかかわらず、家の中では会うことはない、という家もあります。玄関が一つの家ですら、ほとんど没交渉という家は少なくなく、お互いのことを何も知らなかったりします。

近くに住んでいるからといって仲がいい、ということはありません。それは家族だけでなく他人でも同じことです。隣人とは仲が悪いのが当たり前。ただ町内会などの付き合いはあるので、表面上は仲良くしていますが、互いにコンプレックスを持ち合っていたり、家の中では他の家の悪口を言っていたりしますし、まして隣となると、音の問題、匂いの問題、など受忍限度を超えることについて頭を悩ませていることが多いものです。

因果が巡って8050問題に

自分たちが親世代との同居を拒否したにもかかわらず、年をとったから、子供に面倒をみてもらおう、というような甘い話はどこにもありません。もっともこの世代の人たちは、本当にボケてしまったり、歩けなくなるまで、子供に対しては、「わしらはお前らの世話にはならん!」と威張り散らしていたりするので、子どもたちも逃げてしまうのです。

ただ、そういう横暴な親の教育で育った子どもたちは、なかなか社会に溶け込むことができず、学校や会社や社会ではじかれ、引きこもりにならざるを得なくなってしまう。それが8050問題のメカニズムの一つです(全部ではありません)。

しかし同居をしていても、「他の世代と話があうはずがない」と信じ切って生きてきたひとたちなので、オロオロするばかりで何もできません。子供がたくさんいてもきちんと子供を育てたことがある人がいないのです。だからおかしな親子関係がたくさん見られます。

戸籍上は親子だけども、実際は他人同士、というのが8050問題の辛い現実なのです。親子関係をリセットして、一から構築する、ということができれば本当に楽なのですが。