現代ではジャーナリストは誰でもすぐになれる商売の一つです。ジャーナリスト、カメラマン、ライター、著述業、ブロガー、アフィリエイター、団体役員、投資家、コンサルタント、リフォーム屋さん、各種サービス業、さらに言えばプログラマやウェブデザイナー、ユーチューバーは思い立ったその日になれてしまう便利な職業です。

残念なことに、9割ほどが無職、とほぼ同等です。仕事として食えない、というよりジャーナリストというのは「生き方」の一つなのです。宗教者や政治活動者と似ていると言えば似ています。ですが「あなたは何者ですか」ときかれた時に、身分証明に使える、という意味では、たまたま無業者の方は、これらの肩書を名乗ることをお勧めします。

ジャーナリストはとりわけおすすめな仕事です。私どもは、サーバーをレンタルして、つまりお金を出して情報発信をしているのですが、今は無料のブログサービスなども大量にありますし、SNSであっても情報発信はできるので(トランプ大統領が代表的ですが)、一次資料を手に入れることができれば、誰でもたちまち素晴らしいジャーナリストになれます。

毎日決まった店に出かけて価格の動きや人の動きを見ていくだけでも、情報はたくさん得られます。そして、できれば、誰でも良いので声をかけて、その人の話を聞くだけでもすごくいろいろな情報を手にすることができます。それらをブログに書くだけで、立派なジャーナリストです。

私は古典的な手法で、パソコンで記事を手打ちにしていますが、その数倍の速度でグーグル音声認識を使って記事を書くこともできます。また、テレビで放送されているような記者会見などを全部文字起こしするだけでも充分です。録画してスマホで認識させれば、大量の筆耕ができるようになります。

昔は、テレビ、ラジオ、そして新聞、雑誌などの媒体がないとなかなかジャーナリストを名乗れない、という空気がありました。そんななかでも今のメールマガジンのように、月に2回ファックスで情報を送るだけのジャーナリストなどもいました。要はアイデア勝負です。

戦場ジャーナリストは様々なジャーナリストの中でももっとも割の悪い仕事です。仕事としてはほぼ成立していません。多くの戦場ジャーナリストは様々なアルバイトをしてお金を貯め、海外渡航費にあてます。今はLCCが発達しているので、身軽に観光するだけなら数万円で海外に行くことができますが、戦場に入るにはさまざまな手続きや裏ルートも必要なので、どうしても100万円くらいかかると言っていました。

「言っていました」というのは私がインタビューした戦場カメラマンの話です。彼らは「誰かが悲惨な戦争を伝えないといけない」という使命感で行くのです。残念なことにニーズがないのですが。ですから雑誌社やテレビと契約して取材費を出してもらって、ということはもう少なくとも21世紀に入ってからはないのです。

特に今はインターネットで、戦場になっている人たちが情報発信もしている時代ですから、本当は英語もろくにしゃべれない日本人が行く必要もないのです。それでも行くのは「そこに山があるから」という意識でしょう。本当はインターネット上でブロックされて日本人が見ることができない情報はたくさんあるので、それらを拾い集めて記事にするだけでも有意義だと思うのですが、やはり「自分の目で見ないと」という意識が強いのですね。

そう、残念ながらジャーナリストは基本的にはエゴイストです。周りの迷惑など考えない。政治家や有名人のインタビューなども別に彼らにギャラを支払うことは稀ですし、割と多いのが、彼らから仕事を依頼される代わりに好印象の記事を書くという役回りです。

政治家やその取り巻きは大きな力を持っていますから、下手にたてつくと、仕事が全くなくなる、いわゆる干される状態になります。それでも耐えていくのが真のジャーナリストだろうと思うのですが、ほぼいない、というのが現状です。

フリーのジャーナリストが50万円を毎月売り上げるのは大変ですが、そういうジャーナリストは取材費に30万円消えてしまうのが常です。非常に高齢のジャーナリストが今でも活躍しているのは、仕事を辞めてしまうと生活がたちゆかない、というせいもあります。

ジャーナリストは常に「今」を見ていますから、せっかく売れる本を出しても、あっという間に売れなくなってしまうのですね。ですから、相当にエネルギーがいる「生き方」なのです。「生き方」である以上、私たちは批判することはできません。ほとんどの人は、なーんとなく生きているわけですから。でもそれでいいのだと思います。