高層ビル用ダンパーの問題が大きくなってきましたね。もはや、近年に建築された大型ビルの9割ぐらいのダンパーが不良品なんですと。それも官公庁を中心に、大型商業施設や高級マンションまでが対象です。しかし、大きな問題がいくつも報じられていません。そのことが薄気味悪いです。今回は長くなるので二つだけ指摘しておきます。

1.高層ビルのダンパーは30年後の大地震に役に立つのか?
疑問だと思います。通常車に取り付けられているようなダンパーは、毎日のように動くことで、グリースが全体に回るので、きちんと効果を発揮できるのですが、可動部がある装置で30年間一度も使用していなくて、いきなり動くかというとかなり怪しいです。機械というのは日常的な点検、整備、稼働テストが欠かせないのです。
もし私が30年動かしてないエレベーターに100万円あげるから乗ってくれ、と頼まれても断固として断ります。あらゆる安全装置が壊れている可能性が高いからです。CDプレーヤーですら、カセットデッキですら、30年動かしていないものはトレイを開けることすらできなかったりします。
そして高層ビル用ダンパーは、ある意味ちゃんとした実績がないのです。通常加速度テストみたいなことをしますが、実際の経年変化でどんな問題が起きるかわかりません。車の場合ですら、10年くらいでオシャカになるわけで、ビルの減価償却の耐用年数は47年ですから、その間機能を発揮しつづけることができるのかとても疑問です。

2.なぜ今まで問題にならなかったのか?
この問題の発端は勇気あるKYBの品質保証担当社員の内部告発によるものです。おそらくその社員はこんな不正だらけの会社は長いことないから、とっとと逃げ出そうという腹もあったのでしょう。まともな会社がどのくらいあるのかはなぞですが。ほとんどの関係者は見て見ぬふりをすることで、見返りとして出世をし、高い賃金と高額な退職金を手にしてきたのです。
今回の事件では、数人が責任をとって辞職ということになるでしょうが、懲戒解雇にはならないでしょう。なぜなら会社ぐるみ、社会ぐるみでの犯罪だったからです。犯罪と言う意識すらないですから。会社全体が腐っていて順法意識のかけらもないからこそ、長年にわたって不正が続いてきたのですね。
本来ならば会社ごと清算されるべき事案ですが、数人の理不尽な処分で終わってしまうでしょう。結局「うまいことやったもん勝ち」な世の中で、心ある日本人は心底がっかりしてしまいますね。以前のブログで予想した通り、「納期に間に合わせることを優先した」というわけのわからない言い訳がやはり出てきました。つまり、官公庁は年度内に納入してもらわないと取引停止にすることからこういうこともおきるし、デタラメがまかり通るのです。そういう意味では日本の役所にも多大な責任はあるのですが、誰も責任を取りません。
加えて、建築学会をはじめとする建築学部の教員などがほとんどコメントを出していません。私自身は、公開されている資料などを元に建築を勉強して、関連する資格も持っていますが、ダンパーはトンデモ商品の一つだと思っています。建築の世界にはトンデモ商品が蔓延していて、違法建築も大量にあります。しかし、業界は学校も含めてみて見ぬふりをしています。そういうトンデモ商品を導入しないと生活が成り立たないという悲しい側面があるからです。

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