老後資金が2000万円不足するとか、年金だけではとても暮らしていけない、という議論が飛び交っていますが、この議論を好む人たちは年金受給世代であり、50歳代以下には無縁の議論です。

ひきこもり世代に2000万円は別世界

8050問題、7040問題の中心となっている、現時点で45歳前後の半数以上の人たちがこの議論は遠い話です。就職氷河期であったため、新卒で入社することができた人たちですら大卒の6割しかおらず、その後のリーマンショック、米国不況のあおりをうけて、現在も盛んにリストラも進んでいる状態であり、「将来が見えない」状況であることを、残念ながら多くのマスコミや高齢者のかたは理解してくださいません。

受験戦争を勝ち残り、一流大学と呼ばれる大学を卒業しながらも就職がなく、あるいは学者を目指し、しかし結局非正規雇用となり、パート、アルバイトを掛け持ちしたり、なんとか人並みに生活することを目標にがんばってきたけど疲れ果ててしまっている、そんな人がたくさんいます。

生まれてから一度も貯金が100万円を超えたことがない人も少なくありません。日本育英会の奨学金という名前の学資ローンのせいで、大学卒業時点で多額の借金を抱え、しかし正規雇用職がなかったためにそれを支払えないで、ぎりぎりの生活をしている人も少なくありません。

非正規雇用の立場で年金、つまり社会保険料を支払うべきなのかどうなのか、というのは、正解がありません。将来の備えのための年金ですがその比率が収入に対して高すぎるという問題があるからです。

年金解説記事の真っ赤な嘘

今回の一連の報道や、識者のブログなどで驚いたのは、年金制度が、もともと若い人から徴収したお金を高齢者に渡す仕組みである、という制度設計だったと書いていて、無批判にその記事を載せているメディアが多く見られたことです。

あまりにも、現実を知らなさすぎるし、少し調べればわかることなのにまったくのでたらめです。本来年金は、積立金方式であり、積み立てたお金を年金基金として運用することで、政府が責任を持ってお金を増やし、積み立てた金額以上の年金を(寿命が長かった場合は)受け取れる仕組みでした。

そのため、昭和40年ごろには、支払った金の30倍が受け取れる、というような新聞広告記事もありました。嘘だと思うなら縮刷版を見てみるとよいです。つまり、多くの年金解説記事は真っ赤な嘘を垂れ流しているのです。そういう例は悲しくなるほど実はたくさんあります。その裏事情もよく知っています。

バブルの頃は、銀行の金利ですら3%とか、投資利回りが10%くらい出ても天才とは言われない時代がありました。それはそれが常識の時代はあったのです。3億円あれば、一生銀行の金利で食べていける、と子供の頃には話をしあったものです。

標準家族の人数が変化した

しかし時代はすっかり変わってしまいました。すっかり変わる過程にいろいろなことがありました。たとえば少子高齢化の問題です。オイルショック直後1972年頃は、日本の人口は増え続ける一方であり、学者や政府は「このままだと資源のない日本は人口爆発で大変なことになる」と警告を鳴らしました。

その一方、4人家族が基本であるかのような風潮が強く、自家用車も4人乗りが基本でしたし、テーブルセット、建て売り住宅、菓子の詰め合わせまで4で割れる数が人気がありました。

当時は「一人っ子は危険」というような風潮がありました。学校で統計を取るとほとんどの子供には兄弟がいました。しかし、それはまやかしで独身者を含めての統計ではありませんでしたから、実は人口減少に転じていたのに、そのことに対する政府の配慮はありませんでした。

ちなみに現在は三人家族が平均的のようで、3DK物件は人気がなく、リノベーション(大改造)が行われ、2LDKに変更される物件が増えています。また、おかずの類も三人セットのものが増えました。

70歳代以上の人と金銭感覚が違うわけ

サラリーマン定率減税と言うのがなくなりました。サラリーマンであると減税が行われていたので可処分所得が増え景気に貢献していたのですが、税収が欲しいがためにそれが廃止されてしまいました。

消費税が導入されました。同じ理由です。3%が5%になり8%になりました。こんど10%になろうとしています。反社会的勢力からも税金が取れる、というよくわけのわからない理論が横行しました。

介護保険料が導入されました。40歳以上、年金受給者にいたるまで介護保険料を取られることになりました。将来介護が必要になるから、という話ですが、公平性の議論は棚上げのままです。

社会保険料が積立金方式から賦課方式に変わりました。実際には今は修正積立金方式というもので、14%程度は過去に積み立てたお金から運用されたお金が入っています。しかし、約半分は現役世代から社会保険料として回収したお金であり、残りは税金で穴埋めしています。この税金の出所は高齢者自身だったりするのです。

そう、年金から税金を取るという不思議なことが起きています。年金からあらゆる税金や健康保険料などが徴収されるのです。ですから、もらえる年金のうち本当に生活費に回せる部分がどんどん減るのです。

社会保険料が長期にわたって値上げされようやく止まりました。非常に大きな負担率です。それでも、サラリーマンの場合は会社が半分支払っているので、現状でも年金がもらい損、ということにはなりにくいのですが、それでも、世代間格差はかなり大きくなってしまっています。

社会保険料がサラリーマンのボーナスからも徴収されるようになりました。しかし、支払い金額が多くなったからと言って将来もらえる金額が増えたわけではありません。つまり、同じ年収300万円だと、昔のほうが多くもらえることになったのです。

現在は、税金と家賃、そして電気ガス水道電話インターネットなどのインフラ費用を支払ってしまうと、残るお金は非常にカツカツになってしまいます。とても貯金2000万円どころではありません。40年にわたって年間50年を継続することは不可能に近いです。

子供部屋おじさんを許してください

ほとんどの20代サラリーマンの賃金レベルでは一人暮らしは難しく、親元から通うことになります。業種によっては親元から通えることが採用条件になっている場合すらあります。

晩婚化などというしゃれたものではなく、未婚化、非婚化、結婚不可能状態です。最近は一人っ子が多く、一人っ子同士の結婚であれば親は四人となり、この介護ということだけでも大変な負担となります。

現在の中年の財産状況を横断的に見渡す限り、昔は当然であったかもしれない55歳や60歳からの第二の人生や、老後計画などというのはとても考えられず、働ける間は働くけれども、未来への夢や希望がなくならないような本当に有効な経済政策が必要です。

それまではぜひ、子供部屋おじさん、などとバカにしないで許してあげてください。子供部屋おじさんになりたくてなった人はいないんです。だから、そのことを言われるととても辛い。とても厳しい。そういう時代なんです。許してください。

高齢者の声が大きすぎます

日本社会はITの波からすっかり取り残されてしまっていて、それでもいいんだ、という圧倒的多数の高齢者の声に負けてしまいがちではありますが、それでは最終的に誰も幸せになることができません。

日本の高度成長を血と汗と努力で作ったという高齢者の人たちの声が大きすぎます。そして私たちにも怖すぎます。残念ながら、高齢者は助けてくれません。ずっと私たちが納める年金をもらいつづけているだけです。ところが私たちは死ぬまで働け、といわれているんです。不憫にはおもいませんか?

もう数段社会の効率化、自動化を進めることで、年代や体調に応じた社会的な役割をそれぞれの人がこなせるようになり、調和のある日本社会が訪れることを願ってやみません。というよりそれ以外の解決方法はないのです。