50代後半以上の人はお分かりの方も多いですが、昔の日本の会社は家族的経営をされていました。今から考えると、すごくうざったい、めんどくさい関係性でした。会社の人にプライベートを丸裸にされ、土曜日も半ドンといって、午前中は仕事という時もあるのに、日曜日には営業所長とか課長の家に集まって、バーベキューだとかすき焼きをごちそうになる、なんて関係でした。

部門によっては毎日、少なくとも週に一回は朝礼みたいのがあって、二人か三人のくだらない演説を聞かされ、月に2度は部門での飲み会が設定されたものです。まだ小さな伸び盛りの会社ではそういうところもなくはないですが、ほとんど姿を消してしまいました。

家族や仲間だったはずの人たちが不本意に会社を変わる、変化が激しい時代になって、人間関係を希薄にせざるをえないような状況が今です。そのうえ、今はXXハラスメント、が大流行して、家族のことを聞くのもダメ、女性に「かわいいね」というのもダメ。それどことか、5秒以上人を見つめてはいけない、というルールまであるとのことで、他人との距離感を測るのが難しい時代になりました。

物知りの人や年配者から見ると、若い人が言っていることは、あらかた常識はずれだったり、変に思うものですが(年配であるからといって正しいことを言うとは限らないですが)若者たちが話しているところに口をはさんだり、諭すようなことを言ってはいけない、という本当にめんどくさい時代になりました。

私たちが先輩たちからやられたことを、後輩たちにはできないのです。「お客様は神様」神話を信じていた人は、どうしてもたまに我慢がならなくなって切れてしまうこともあります。あるいは、上述した人間関係に気持ち悪さを感じて、怒鳴ったりする人もいます。

昔はそういうのも普通にあることでした(駅前で、決闘しているオジサンたちはたくさんいました)が、今は「スルー力(りょく)」を身につけましょう、というのが社会常識化してしまっています。空気を読み、他人はスルーというのが基本なので、みんながとても生きづらくなっているような気がしてならないのですね。

おせっかいな人が良いとされていた時代から、おせっかいな人はめんどくさい、に社会の価値観が変わってしまいました。それでも誰かがおせっかいしなければ、と私どもは思っているのですけれどもね。こういう価値観の大きな揺れというのは日本だけではありません。日本の場合はわずか10年足らずで、価値観が大きく変わってしまいました。どうしてもついていけない人が大勢います。ついていけないことは恥ではありません。ついていかなくとも、その世代の中でのコミュニケーションには支障は出ないので気づいていない人が多いことの方が問題なのだろうと思います。