8050問題解決のためのアドバイスについて、超重要なお知らせがあります。特に重篤な8050問題状態にあるとき、つまり、たとえばニート生活が長期化して、10年以上ニートでいる、というのが(引きこもりではなかったとしても)重篤な状態ですが、そうした場合、特に80歳前後の親は50歳前後のお子さんにはアドバイスしてはいけません。

昔から「親の意見となすびの花は千にひとつの無駄も無い」といいますが、それは大昔の話で、今のようにくるっくる、世の中の常識や風習までが変わってしまう世の中においては、すべてのものが変わってしまっているので、故事成語をいくら持ち出してもなんの慰めにもなりません。私どももそこそこ長く生きておりますが、棒に当たった犬を見た事もありませんし、小判を持っている猫をみたこともありません。

いや、それはたとえであって、とお思いですか? そう。「親の意見と」という言い伝えは、「親のアドバイスはたいてい価値がないけど、精一杯の親切心でやっていることだから、尊重するふりをしてあげるのがマナーですよ」という意味なんです。要は「親孝行をしましょう」とか「親は産んで育ててくれたんだから感謝しましょうね」という標語みたいなものです。

そして、そういう標語とか、落語とか、物語とか、映画とかが昔からたくさん作られているのは、実際には現実社会は、みんな自分のことだけで必死なので、親のことなんか誰も考えないし、別に尊重しなくたっていいし、どうでもいいっていう人が多いからなんですよ。戦国時代なんか親子で殺し合いやってたんですからね。

もう何十年も前からいろんな会社で「挨拶をしましょう」っていう運動をやっています。「エスカレーターは歩かないでください」なんてアナウンスやポスターも何千枚と刷られています。東京都なんか最近は税金を使って「おせっかいをしましょう」運動しています。

若い人に聞くと、「なんか知らないおっさんとかがマウンティングしてくるのとかムカつくよね」とか「年寄りは話が長いよね」「めんどくさいよね」「メールで済む話を電話してきたり会いにきたりしてマジむかつく」「電話って時間ドロボーだよね」で、そうだよなあ、と思います。しかし、年配のマナー講師は「メールを送ったら電話をしましょう」とか教えていたりして、とても厄介。

運動があるってことは実態がそうではないからなんです。私には強烈な思い出がありますよ。むかし、ほとんどの会社は禁煙ではなかったのですが、だんだん「分煙」とか、仕事中は禁煙、というのが進んできたころの話です。取締役が、売上げの数字が悪いから、ということで部課長全員を終業時間後に会議室に呼び出しました。そして「会議室内禁煙」と書かれたポスターの下でタバコに火をつけながら「おめえら! 約束が守れねえのか!」

そうなんですよ。タバコを吸う人が誰もいなければ「禁煙」表示なんて存在しないんです。日本では特に「ゴミを捨てるな」と書かれた場所にゴミを捨てる人が多くなる、という不思議な風習がある国でもあります。桃太郎、が何十年と読み継がれてきたのは、「本来村の財産だったものを鬼から強奪してでも自分の家だけは安楽に暮らしましょう」ということをしている家庭がどこにもなかったからなんですよ。

8050問題解決のための一番重要な、当事者である親御さんへのアドバイスが、「子供にアドバイスするな」なのです。大事な事ですから二度言いました。「もうちょっと身だしなみをなんとかしたら」とか「ごはんぐらい一緒に食べたら」「お医者さん行ってみたら」というようなことも、つい軽い気持ちで言ってしまいがちですがダメです。ただちにやめてください。取り返しがつかなくなる場合があります。

アドバイスもダメなぐらいなので、なじるのもNGです。「あなたのせいで、私は旅行にもいけない、友達とご飯食べにもいけない」とか「あなたが家にいるせいでXXX」というようなことは、愚痴として出てくるかもしれませんが、ガマンしてください。ため息もダメです。睨んだり、嫌がらせをしたり、人間扱いしないような態度を取るのもダメです。

こういうと、「あなた方はなんなの、私の年金なのに、子供たちの心配ばかりして、私たちの心配はしてくれないの?」とお思いになる親御さんも多いかと思います。それはそれで私どもは心配です。非常に心配です。うつ病、という心の病は、あまり知られていませんが高齢者の罹患率が高いのです。生活に希望が持てなくなるようなことがあれば、だれでもうつ病に罹患しやすくなります。ですから、早めに専門家に相談して欲しいのです。

なぜ8050問題解決のためのアドバイスを親がしてはいけないのか、というお話をさせてください。8050問題、というのはお子様自身の生活と精神状態がピンチの状態が長期間続いているという状況なのです。50歳で、同級生やテレビの中の人はしあわせそうにしているのに、自分にはその幸せはないのです。そして、抜け出すための救命ボートもない状態なのです。

いい年をして親に養ってもらっているのは情けない、なんてことは、多くの場合、本人も知っています。引きこもりから抜け出すためには働けばいい、という暴論を言う人もインターネットの世界にはたくさんいます。他人事だとそういうことが言えてしまうのです。さまざまな事情で離職したことによって働けないからやむを得ずニートになり、引きこもりになっているのであって、だからそれは無理なんですね。

さまざまな事情って、だいたいどういうのがあるの? というご質問を受ける事は非常に多くあって、多くの場合興味本位であるので、私どもは答えないようにしています。私どもはカウンセラーであったり問題解決の当事者であって批評家、評論家ではありませんので。お答えする義務もありませんし、資格もありません。そして、個人の隠したい事情を他人にお話しする事はありえません。

さまざまな事情は、本当にさまざまな事情です。一つではない場合がほとんどです。ご本人やご家族が最初にお話されるのは、本当のきっかけだったり、一番最初のつまづきだったり、一番最後のつまづきだったりします。納豆を毎日食えばガンが治る、みたいな話はありません。これからもないでしょう。

私たちは決して他人に、ヒアリングやカウンセリングでお伺いした事をお話することはいたしません。大原則としてご本人の同意がなければ、親御さんやお子さんにもそれぞれの話をお伝えすることはありません。ですが、一つだけ言えるのは「なーんだ、そんなの簡単じゃん」みたいな話はほとんどないのです。

8050問題解決のためのアドバイスを親がしてはいけないのは、アドバイスとか忠告とか親切心からのつぶやき、といくら親が思っていても、子供は「逆らえない命令」に受け止めるしかない状況に追い込まれていて、さらにその内容いかんによっては精神的に追い込んでしまう事になってしまうからです。

ニートは、特に家庭内では非常にセンシティブな状態にあります。出歩けて外で積極的に活動ができる状態であればまだしも、他の人と対等なコミュニケーションが築けないような状態になっていたりすると、もう引きこもりと精神状態としてはあまり変わりない状態です。そうした人を追い込んでしまうと、不可逆的に最悪の状態になってしまう可能性が非常に高くなります。

命令を受入れてしまうと自我が崩壊してしまう場合に、ふつうの人はあらゆるインプットを受入れなくなります。一方、自我がネガティブ思考だった場合、かなり危険な結論に到達してしまうこともあります。そういう状態になってしまった場合は、アドバイスはおろか、提案も、救済も全く受入れることができなくなってしまうのです。私どもがお伺いしても無駄、ということになります。

まあ、よく親御さんが、「うちの子供は、私の言う事を聞かないんですよ」と嘆いていらっしゃいますが、反抗期以降、というか自我が確立したならば親の言う事を聞かないのが当たり前なのであって、その親御さん自身もそうだった筈なのですが、「我が子に対してだけは非常に傲慢な親」というのがかなり多くて、それは世間で通用しないものは家の中でも通用しないというだけなのですが。