まったくこの国の政治家・官僚の頭の悪さには困ったものだ。単純な算数もできないし、たった三年先の未来を予測する力もなければ未来を発明する能力が全くない。絶望的な未来しか見えてこない。少子化対策なんか頑張ってもしかたないんだよ。8050問題対策が先。優先順位がおかしい。

もうすでに日本の人口は急速に減り始めている。1980年代には年間70万人だった死亡者が倍の140万人を突破している。その一方新成人は仕事をリタイヤメントする人数より格段に少ない。人手不足はどんどん深刻になっている。それは過去の政府の無策による、というより人口抑制政策のつけでそうなってしまっているのに、その反省もなく、太平洋戦争で失敗したうめよ増やせよ政策をやっている。もうアホとしか。

太平洋戦争の時代には、日本政府は富国強兵政策として、女性にたくさんの子供を産むことを奨励した。昭和14年だか15年には10人以上の子供を産むと総理大臣から国に尽くした、ということで表彰状が出たのであるよ。

しかし、それは結局戦争に間に合わなかった。そうだよね、鶏じゃあるまいし、ぴょこぴょこ産まれたって、3か月で出荷できる状態には人間はならない。昭和14年に生まれた子供は終戦時に6歳にしか過ぎないから、せいぜい小学校の校庭で竹やりを振り回してB29を撃墜しようと勇んだだけに終わったのだ。

そのかわり、彼らは日本の高度成長に大きな役割を果たした。1950年代、日本はなんと人口の6割が20歳代だったのだ。同じ釜の飯を食い終身雇用制度、年功序列制度、というのは、日本が戦争に突入していくために考え出された「新しい常識」だったことを忘れてはならない。

それまでは職人が「渡り」を行い、転職を繰り返して給料を上げていくことによって、最後は名店ののれん分けをしてもらう、というのが日本人のモデルだった(江戸時代はまた状況が全く違う)。当時は、住宅ローンや開業ローンのようなものもないから、たくさん稼いだ種銭で独立したのだが、こういう人が多いと物価高が起きインフレになるから、ということで政府は転職を縛り、年功序列賃金を発案したのだ。

そのおかげで、1950年代から60年代にかけて、日本は賃金は安いは、まだ三六協定なども運用されていなかったため、覚せい剤を使ってまで何千時間も仕事をするわ、1ドル360円の超円安の固定レートで、安かろう悪かろうだった日本の製品が飛ぶように売れることで高度成長を成し遂げたわけだよ。そのかわり、自然は破壊され、川はどぶ川、六価クロムや水銀、カドミウムなどの環境汚染物質がばらまかれ、公害病が蔓延した。

環境汚染物質の禁止だって、2000年代になってからヨーロッパがRoHS(ロース)規定というものを作り、環境負荷物質を使わないものしか輸入を認めなくなって、しぶしぶ日本も従ったまでで、それまでは日本の町工場でも、大工場でも、アメリカの工場でも鉛中毒でバタバタ人が倒れていた。

もちろんそういうことを言うなら近代日本の礎となった、八幡製鉄所で鉄を生み出すためのエネルギー源として使われた、これも世界遺産に登録された長崎県の端島、通称軍艦島から三菱が大量の石炭を掘り出したのだって、確かに三菱の課長クラスはとんでもない高給をもらえていたけれども、穴倉のなかに入っていた人たちは煤だらけで肺を病み死屍累々なのだけれども。

話を戻すと、今から少子化対策を行っても、これから産まれてくる子供、どころか、今保育園や幼稚園を探している子供が働き手として機能するまでに20年近くあるわけだが、それをしても少子高齢化自体は止まることがないだけでなく、そもそも10年も経済が持たないのですよ。

もう政府がやっていることが片っ端から時代錯誤であり、木を見て森を見ない政策、もしくは特定のロビー活動をしているような企業や法人の理事の懐を肥やすようなものばかりで、日本国民一般ピーポーの最大幸福にはつながらない。もうそれくを放棄したとしか思えないような政策だ。

場当たり的に移民を入れようとしているが、不足する労働力に対してあまりにも桁が違ううえ、「日本文化を学んでほしい」と見当はずれなことを言っている。その一方、その肝心の外国人労働者にとってはメリットが非常に少ない。安い賃金で誰にでもできるような仕事をあてがおうとしている。

移民だけではない。現在大企業で不当ともいえるほど巨額の給料をもらっている(といってもアメリカの大卒平均賃金からすると安いのだが)人たちを解雇して、安い派遣労働者に置き換えようとしている。これも愚策中の愚策で、日本の労働生産力が非常に低い上に馬鹿みたいに長時間労働をしているのを改めるのが先なのだ。

給料が高すぎるのではなく、生産性が低すぎるために、国際競争力がないのであって、ドイツが時間あたりの生産性が60ドルを突破しているのに日本はせいぜい40ドルだ。そりゃそうだ。60歳代のプロパー社員は一本指打法でコンピュータ使っているんだもの。一時間かけて名刺入力が3枚しかできない、なんていう元管理職がゴロゴロいる。お話にならない。

だって、名刺入力なんてスマホの無料のアプリで、写真を取れば一瞬で読み取って、たまに修正が必要なだけで、コンピュータなど使えない人に30分くらいやり方を手ほどきすれば、一時間に数百枚入力できるんですから。

まあ、もちろん一本指打法チームは失職してもしかたないな、と思うけれども、だって、もっと優秀な人材が仕事をさせてもらえていない現状があるわけだから、それよりそういう人たちも含めて再教育し効率化をはかれば、GNPも上がるし、国際競争力もつくのだよ。なぜ日本をあきらめてしまうのだろう。

今リストラされようとしている人たちの平均賃金は600万円から700万円で、一時間あたり5000円程度の富しか生み出すことができないことを考えると、明らかに高すぎるわけだけど、それは人材の再教育や見直しでぜんぜん変わるんだ。

問題なのはリストラされた人がそのままニートになってさらにニート人号が増えてしまったり、少なくとも収入は減るし、新しく配置される人も身分は正社員だったとしても賃金は安く抑えられるので、日本人の総収入が減ることになる。これはとても問題だ。

内需が存在しなくなってしまうからね。なにより、長い目で見ると、低賃金の人が多い、ということは、税金をあまり払わないけれども社会保障、福祉をたくさん受ける人が多くなるということなんだ。これは日本に旅行で来ているのに定住しているふりをして保険証を悪用して高度保険医療を受ける外国人の問題の数倍大きな問題なんだよ。

こんなことをしてしまうと、日本の年金、健康保険医療、介護保険医療、あはき業界を始め、あらゆる福祉産業が持たなくなってしまう。現役世代3人で1人の年金受給者を支える時代に突入しようとしているのに、リタイヤメントが速くなると現役世代と呼べる人が少なくなるから、あっという間にそういう時代になる。

その時に、年金はほぼ完全賦課方式、つまり自転車操業方式になっているから、現役世代の賃金が低いけど、年金の支払額が変わらないとすると、現役世代から徴収する想定絶対金額が変わらないとなれば、保険料をさらに値上げするしかなくなる。25年後の大卒新入社員が受け取る給料の7割が税金と社会保険料になってしまって親が養い続けなければならない、ということがわかったら、いくら幼稚園や学校を無償化したって誰も子供なんか育てませんよ。冗談じゃないよね。

それより足元をみなさいよ、という話なんだ。今、8050問題や7040問題に代表される引きこもりやニートは70万人とも100万人とも言われているんだ。この人たちって本来は働き盛りなんだ。この人たちを引きこもりから脱出させて、再教育すれば、現在のぬるま湯で育った、自己啓発だけで頑張ってきた人たちの倍くらい働けるようになる。これは経験則でよくわかる。

以前、ちょっとした手違いで、コンピュータに全く触ったことがない、段ボールの組み立てのつもりで応募した、という派遣の人たちがデータ入力をさせられることになったことがある。筆者は、元々パーソナルコンピュータの黎明期からあらゆるコンピュータを使った仕事の経験があるから、最初は傍観していたのだけど、派遣のチーフは教える能力が低くて一般社員の1割くらいの処理能力しかでなかった。

そこで、筆者が1時間ほど再教育をしたり、セットアップをして使いやすくしてあげたら、めきめき処理能力をあげて、2日後には60歳代のコンピュータ未経験者が一般社員の倍近い処理能力を出すようになったし、30歳代のスマホは使えるけど、という人は、その1.5倍ほど処理できるようになった。もちろんそれでも筆者の8割くらいではあるのだが。

圧倒的に業務指示を的確にできる人、マネジメントできる人が不足しているのも事実だが、日本の平均的な労働者の生産性の低さもとにかく問題だ。最大の問題は、せっかく宝の山が眠っているというのに、支援費用を引きこもり支援を行っている業者に渡すのではなく、既得権益者にばらまいて経済をおかしくしていることだ。

よその国から鉦や太鼓やクールジャパンとか言ってじゃぶじゃぶお金使って、人身売買業者にお金をたくさん使って外国人を連れてくるより、なぜ日本で生まれて、日本で育って、社会のひずみのせいで自分を見失っている人たちを助けてあげないのか。

日本人の生産性を上げ、日本人が元気にならなかったら日本の未来はどこにもないというのに、税金を自分のお金のように考えてばらまいたり使い込んだりする人たちのことを許していていいのか、問い直す時期にきているのではないだろうか?

鴻巣尚史