間違った「ひきこもり本」というのがあって、有害図書に指定して欲しいと思うな。けっこうあるのが「引きこもりの親は遊べ」っていうやつだ

まあ、あれだよね、こういう本だと、これだけ本が売れない時代でも売れるって話としか思えない。FXで一億円儲かる本とか、株式必勝法とか、Youtuberで一発逆転、みたいな本だとか。「本に書いてあることの逆が正解かも」くらいの信頼性の低さったらない。

実際には、そうした本を出している出版社のカラーなどで、おおよそ本の内容がわかったりする場合もあるわけね、プロは。出版社によっては、もう、実売分の印税しか渡さないような出版社もあるし、だいたい印税って1割だったんだけど、最近は5%なんていうのもある。

「本に書いてあるから正しい」時代はすっかり終わったのよ。今は、いんちきビジネスのために本をタダで配るような時代。日本の借金大国は嘘、国の保有財産を売ればチャラだからいくら借金しても平気平気、なんて本が飛ぶように売れる。本当に大の大人が阿呆すぎるんだよなあ、もう。

引きこもりの親は好きなことをやって遊びなさい。人生を謳歌しなさい。すると子供も人生の楽しさにめざめる、ってあなたバカですか? そんな簡単な理屈なら、誰も引きこもりになんかなりませんて。

引きこもりの子供たちの苦しみも知らないで、知ろうともしないで、向き合おうともしないで、親は温泉旅行ですか? それでついうっかり、あなたもいっしょに来ればよかったのに、と口を滑らしたら、一生口を利いてもらえませんよ。本当に危険。その危険をわかっていない著者も無責任。

子供はらいつらい目にあってきたわけですよ。中には、重篤な精神病になるまで、会社を辞められなかったかもしれない。逃げ出すことができなかったかもしれない。その辛い事情っていうのをあなたはどの程度知っているの? 興味があるの? 本当に理解できているの?

つらい辛い物語は、一日や二日の話ではありませんよ。何年も、何十年もの話ですよ。それを「そんな昔の話」とか、「そんな程度、世の中にはこんな辛い人の話もあるんですよ」とか「お母さんにも辛いことはあるんだからね」と言ってしまったことはありませんか?

それは正論だよ。でも、弱っている人には、正論が一番こたえるんだよ。正論を言われたら逃げ場がなくなるんだ。唯一の逃げ場が実家だったのに、そこでも正論言われたら、死ぬか引きこもるかの二つに一つなんだ。そして死ぬほうが実は楽なんだ。

引きこもっていてくれるって、本当にぎりぎりの状態なんだよ。マジメに考えたら毎日が辛いんだ。引きこもりやニートが惨めな状態だ、なんて誰でも知ってるよ。年取ってればなおさらだよ。でもそれは簡単には変えられないんだよ。

そんなときに、他人の心無い慰めの言葉なんか、すべてがトゲのように突き刺さるよ。救われるとしたら次の三つしかないんだ。

1.出口と正解を教えてもらうこと。これは今、日本では8050センターだけが可能だ。自分がどうしたら「よくなる」のか、「よくなったらどうなる」のか「どういう順序でよくなる」のか、ありとあらゆる疑問を逡巡なしに回答してくれること。自分に寄り添って、一緒にラスボスを倒すために戦ってくれる人、なんだ。これはもう親がそういう立場に立つのは無理。引きこもり一年目だったらそういうチャンスがあったけど、長引いた引きこもりでは、親は烙印を押されているから、相当努力しないと無理なんだ。 親が8050センターの指導を仰いだうえで、対話するというのはいいんだけどね。

2.お前のことは一生面倒見てやる。俺が死んでも遺産でなんとか食えるように画策してやる。と親が言って、家族信託制度などを利用するようにする。ただ、いきなりそういう会話もできる状態にはならないから、なんらかのサービスなり親類なりを入れて話をしないといけないな。

3.とてつもなく不幸な話、ひどい事故が起きたというような話を聞く。自分よりみじめなはなし、醜い話には少し関心があるよ。ただ、その事故にあった親はかわいそうね、とは思わない。何しろひきこもりにとって悲劇のヒーローは自分自身なんだから。そりゃ、そうでしょう? 家族ならわかるはずだよ。家族ならよく考えればわかるはずなんだ。それでわからないとしたら、残念ながら、その家族はもう終わりなんだ。

いずれにせよ、世間話なんかできる状態じゃないんだよ。それは子供も大人だから、世間話をするふりくらいはできるかもしれない。しかし、すでに形作られている家族の形はそう簡単に壊れないし、他人のようにそれで心が近づくこともないんだ。

まして、親が楽しんできた話なんて、正直聞きたくないんだな。僕らはイチロー選手のことが大好きだったけど、別にヒット2000本打とうとも思わないし、野球なんかやらないしさ。親が人生の楽しさをいくら伝えたくたって、世代も趣味も嗜好性も興味も違う子供たち世代をどうこうすることはできないんだよ。

そんな単純なことすら気づかないから、子供がひきこもりになっちゃったり、それを一生懸命隠そうとしたりするわけさ。本当に悪いことは言わない。こういうどうしようもない親は、早く捨てて逃げるしかないんだよ。