登戸殺傷事件が「8050問題の当事者である」という報道をうけて、当センターおよび現代問題研究所としての見解を述べました。リンク先(8050.co.jp)をごらんください。8050問題がこのような形で世の中の耳目を集めることは好ましいことではありません。連日テレビには、たくさんの自称専門家と称する人が出てきて、非常に心無いコメントを展開していることについては大変遺憾であります。

ことに許しがたいのは、ひきこもり、その家族が長年苦しんでいるにもかかわらず、有識者という無知な輩どもや、中にはカウンセラーの隠れ蓑を着て性犯罪を行ったような人までもが、この犯罪者はひきこもりである、ひきこもりは精神異常である、社会からいなくなってしまえばいい、と自分が同じ社会の人間ではなく、全く他人事であるかのような論陣を張ること、それを無批判に公共の電波で流す放送局です。

ひきこもりに限らず、重大な犯罪を犯してしまう人はたくさんいます。彼らもまた社会の一員であり、同じで社に乗り、同じコンビニで買い物をし、同じ空気を吸って生活しています。そうした人をはじき出しては社会がどんどんダメになってしまいます。日本語も正確に話すことができないコメンテーターの話を真に受けてはいけません。テレビや新聞報道を見てはいけません。ひきこもりを責めないでください。このかたたちはそんな社会の犠牲者なのです。日々、テレビや新聞、そしてあなたがたご自身が犠牲者を作り出しているのです。

今後、このような事件を繰り返さないためには、社会の成長・成熟が求められます。ひきこもりのかただけが成長すればよいのではなく、ひきこもりからの挨拶を返すことができなかった人、全日本人が自己批判し、努力し成長をしなければいけません。それはとてつもなく大変なことです。この40年、日本は精神的な成長を行わないできてしまいました。努力しないでも大金持ちになれるようなロールモデルしか考えなくなってしまいました。

私どもは、ひきこもり問題解決の「答え」を持っています。さまざまな社会問題解決の「正解」も知っています。しかし、それを今、テレビや新聞、メディアで公表することに興味がありません。なぜならば、あらゆることに不寛容な日本の現代社会で、その「正解」を申し上げたところで、理解できる人間が少数だからです。本当に困っていて解決に向かって動きだしている人に、その人が受け取りやすい形で提示することで、その「正解」はご納得いただける、そういう種類のものだからです。

ステロイドを打ったら病気が治る、というような話ではないのです。テレビの識者なる人が、ちょっと不用意な発言をしただけで、何百人もの人が死に追いやられるのです。あるいは死ぬ苦しみを味わうのです。何かいいたいことがあってもSNSなどに書きなぐるのは自粛していただきたいと心より思います。

ひきこもり解決は、あらゆる人たちの暗部との戦いでもあります。辛く、厳しく、勝ち目が薄い戦いです。効率も悪く、今のところ金銭的にも恵まれません。批判・非難もたくさん受けます。鬼のような人しか日本にはいない、と感じます。ひきこもりの人も平静を装っていますが心の中の葛藤は筆舌尽くしがたいものがあります。

一連の知識人の発言は、現場のピアサポーターからすると容認しがたいものがあります。実際に診察をしたわけでもなんでもない人を医療資格も持たない人が勝手に精神疾患であるかのように言う。職業倫理も公共福祉もなにもありません。「コミュ障」と人格否定するに至っては、世の中の半数以上の人がコミュ障である現実をどう考えるのか、無責任すぎると思います。

ひきこもり関係者のみなさまに置かれましては、精神的な混乱を防ぐため、当面、あらゆるメディアにできるだけ接触しないことをお勧めいたします。