プライドが高いということ

ひきこもりの人はプライドが高いが自信がない、と、よく言われます。プライドというと語弊があって「傷つきやすい」というより「傷ついたら終わってしまうかもしれない恐怖」が大きいんです。

自信は本当にないのだけど、たとえば親などから「あなたはやればできるんだから」というような、無責任な励ましの声をかけられる。本当にひきこもっているひきこもり以外は一応社会生活もしているので、「自分はふつうに仕事ができるんだ」と思いたい。そこで、「あるべき自分」「あるであろう自分」「見えている自分に合わせた自分」というのを持っています。

だから、内弁慶で、ほかの家族や親たちには威張ってみせたりもします。「やればできるんだから」と言った親は「できる私は変な我慢はしたくない」「やるためには勉強が必要で学校に行きたい、だからお金をくれ」といわれると、わたさざるをえなくなってしまいます。

本来であれば、「勉学のために、入学金、授業料、交通費や食費など、金500万円を借用します。卒業後、資格を元に直ちに就職し、10年で完済することをお約束いたします。なお遅延の場合は年率5%で違約金を支払うことを誓います。」など親子と言えど厳正な借用書が必要です。

というのは借用書を作ってみると、それが現実的なプランなのかどうかわかるからです。「ただちに就職できる」根拠はなんなのか、「資格」で実際にはどれだけ現時点で稼げるもので、その資格を取得する数年後もその状態がキープできているのか。それをきちんと、できれば第三者を交えて話し合う必要があるのですね。

資格で就職できる時代ではない

実際のところ、手軽に取れるような資格で、ひきこもりなどでブランクがある人がただちに就職できたり開業できる資格はほとんどないし、開業するにも資金がかかる。多くの資格は資格ビジネスの食い物にされるか、とっても無資格のアルバイトとほとんど変わらない職があるに過ぎないのです。

たとえば「調理師免許」「大型特殊機械運転免許」など、仰々しい名前の免許は、権威がありそうに思えるけれども、吉野家でバイトするのに調理師免許は不要ですし、クレーン免許などは本当に意味がなくて、会社ごとに運転装置の扱い方が違う上、そうした機材は私有地で扱うため、公道を走る機会はほとんどないのです。

福祉系では本当にいろいろな会社がいろいろな資格を作っていますが、たとえばカウンセリングは時給1000円が多く、それでも求人が殺到するような状況です。実際には医院などは3000円取りますが、給与として支払われるのが1000円ということになります。これでは資格がいらない仕事と給料が変わりません。

どんな仕事でもやれ、ではない

仕事の内容はかなり重要で、ひきこもり期間が長い人は倉庫でのダンボールの組み立て、とか、資材のピッキング(必要な資材を集めてくる)、さらにはライン工など、あまり人と交わらない仕事を選びたがりますが、社会に出て行くためには、できるだけ人と交わる仕事にチャレンジしていくことが重要です。自信をはぐくむことが大切だからです。

また、雇用形態も重要です。派遣会社に登録したほうが仕事はきやすいですが、派遣という雇用形態は言われたことだけしかやってはいけないので人間扱いされない職場も少なくありません。一方的に怒られるだけ、という職場はわりとあります。そのかわりどんどんやめることもできますが。

ただ、派遣での職歴というのは、履歴書的にはあまり価値がありません。アルバイトは、短時間勤務であっても、社員と同様の待遇になりますので可能ならアルバイトのほうがよいでしょう。シフトも体調に合わせて入れていければなおよいですし、職場で関係性をもてれば、社員登用への道も開けるかもしれません。

とにかく、ひきこもり時代の人間関係は一度切ることが重要です。本当は家を出られるのがいいのですが。住み込みで働けるような仕事があれば一番いいのですが。仕事の内容をいちいち親に報告する必要もなければ、食卓の話題にする必要もありません。家の中の自分と完全に切り離した新しい自分を創る様にしてほしいのです。