「他人から感謝されることで自分が幸せになれる」福祉の現場では、こうした言動をよく耳にします。普遍的な価値観ともいえます。しかし私どもは、そうしたことのためにこの事業を行っているわけではありません。

「金のためか?」これも違います。成功報酬を頂戴することもございますが、この事業は、今のところ「もうからない」「効率が悪い」仕事です。だから事業者数が少ないのです。また、たびたび申し上げるように株式会社で運営しているのは、NPO法人なら公的費用を受け取れるがひきこもり解決につながらない方法を実施しないといけない、からです。

お金目当てであれば、NPO法人で事業を行なうのが近道なのです。そのかわり独自の経営理念で運営することができなくなります。ひきこもり問題を30年間放置し、育てたことにより61万世帯の8050問題になってしまった、これが日本の福祉NPO法人の実態です。パラドックスとも考えられます。

私どもが事業として8050問題解決を行っているのは「できてしまう」こと、「社会貢献ができる」こと、だからです。ひきこもり問題解決メソッドは、発見してみると、それは何十年も前から問題提起されていたことでした。

ところが、ほとんどの事業者はそれに気づかず、あるいは知らないふりをしてなのか、かつインターネット上にもそうした情報がなく、「無駄な努力」「的外れな支援」をしているのです。

こうした例は、医療現場でもよく起きている話です。今はだいぶ減ったと思いますが、ちょっとした風邪で、すぐ抗生物質を処方するお医者さんと言うのが昔はたくさんいました。

その昔は葛根湯医者というのもいたそうですが、とにかく、お医者さんに来た以上は、何か薬をもらいたい、という患者心理、お医者さん側も経営を考えての投薬行為ということで利害関係が一致し、現代ではまったく無駄と考えられている、風邪に抗生物質、切り傷に赤チンといった処方がされました。

無駄であるだけではなく、抗生物質の多用は害をもたらし、抗生物質が効かない耐性菌が現れてしまうということも明らかになっています。私自身、抗生物質の過剰投与により、内臓がおかしくなり、「薬を抜くための入院」を行ったこともあります。

ひきこもりは、病気ではありません。ひきこもりは子供だけの問題ではありません。ひきこもりは親の問題です。したがって親がひきこもり問題を治すことはできません。

こんなとても当たり前の話をみんながわからないふりをしているのです。「金儲け」をしたいからです。ひきこもりは子供が悪い、親は悪くない、と言い続けている限りひきこもりが治ることはなく、月会費なり案件請負なりで、業者はいくらでも超え太ります。ほとんど犯罪的といってもいいでしょう。

だから、そうした凡百の業者や、ひきこもりの原因を作り出している親たちには治せないひきこもり問題を私たちは治すことができるのです。そういう能力があるから、それを使っているだけなのです。

他人からの感謝をされたいために福祉の仕事につきたい人は、考え方を変えたほうがよろしいかと思います。自分の幸せのために他人を幸せにする、というのは、行き過ぎると他人が幸せになれないと自分は幸せになれない、ということになります。

とても残念なことに、すべての人を幸せにすることはできないのですね。確かに、他人を幸せにすることで得られる幸せというのは重要です。同居している人が不幸せな場合、自分だけ幸せでいる、というのはとても難しいのです。

正しい優先順位こそがもっとも大切です。自分が幸せでなければ他人を幸せにすることができない。自分の幸せと他人の幸せのどちらが大事かといえば、自分の幸せです。次にパートナーや家族たちです。他人の幸せは、もっとずっと遠くにあります。

不幸な家庭の人ほど福祉の仕事に興味を持ちます。ある意味、不幸せのまま死んでしまった家族や、幸せになることに興味を失っている家族がいる場合は、より強く「自分を幸せにするために他人を幸せにする」行動に走ってしまうのです。

もっと言えば、自分を幸せにすることができない人は、他人を幸せにすることはできません。よく考えてみてください。「あなたは幸せですか?」