たとえば私たちは何かの仕事を成し遂げようとするときにToDoリストを持ちます。プロジェクトマネジメントの世界ではWBSと呼びます。これは細分化された一単位業務のことをいいます。例えば庭をきれいにしようと思ったら、植木はさみだったり剪定鋏であってり、場合によっては高枝切りやチェーンソーも必要かもしれません。もちろん竹ぼうき、塵取り、ゴミ袋なども必要でしょう。

必要なアイテムを手に入れてから仕事をすることというのはとても大切で、あるカウンセラーさんは、「仕事をすることとロールプレイングゲームは同じだ」と表現していました。うまい表現だと思います。その一方、ある単位業務をすることと人生を生きることや、仕事につくことはロールプレイングゲーム(RPG)でもなければテトリスでもありません。ちょっと失敗した、といってリセットボタンはどこにもないのです。

RPGとレールの上に乗ってる人生というのは全然違います。そして人生はRPGではありません。人生にはラスボス(最後に戦わないと勝てないい敵)はいませんし、そもそも戦いではありません。一番良い就職の方法は、友達や家族からの紹介です。あるいは、ふらっと立ち寄ったお店で求人があってそこで働いてみるというのが一番素敵な方法です。

働きたい会社を見つけて、そこの採用権限を持つ人とか、社長に会って仲良くなって採用される、というのもすてきな方法です。採用する人が一番見たいのは、その人のすでに備えている能力や経験、何より人柄であり、どんなに難しい資格を持っていても、その会社を破壊してしまうような人、みんなを病気にしてしまう人は求めていないのです。

しかし、なかなかそういったチャンスがないことと、人材紹介会社が暗躍していることから、まず身だしなみを整えて、良い証明写真を撮って、履歴書を書いて、星の数ほどあるエージェントに送って、面接も少なくとも2回、多ければ7回もやってようやく仮採用され、三か月の試用期間ののち社員になれるのが正しい道、みたいになってしまって、これだけ見るとRPGにしか見えません。

採用条件の欄には、小難しい資格が並んでいることでしょう。しかしながら、それらのアイテムを苦労して手に入れたとしても採用されることはほとんどありません。英語にしても資格にしても、現場経験の方が重要だからです。万が一、経験がなくて採用されたところで周りは自分よりできる人たちの集まりになってしまいます。とてもやtつづけることはできないでしょう。

現在の世の中ではフルタイムで働いたいことがない人がいきなり年収400万円以上の職につくことはほぼ不可能です。就労経験がない人は、年収100万円、200万円の人を小ばかにします。とんでもない考え違いです。時給1000円でフルタイムで働いてやっと月収20万円です。最低時給が少ない地域では15万円程度です。

そして就労経験がない人は、週3日、一日6時間労働であっても「とてもしんどい」のです。時給の高さ、業務の気楽さ(かえってハードな場合も少なくないですが)、生活スタイルが許すならば、夜勤を選択したり、シフトで働くという方法もあります。こだわりが強ければ強いほど制約は多くなりますが、就労経験ゼロの人は、まず週2日からでも定期的に収入を得られることを目標にしたいところです。

収入ゼロと、日給5000円の手取りでも、ものすごく心理的な気楽さが違います。自分が働ける、世の中に参画できる、頑張れる、ということがわかるだけでいろいろな可能性が見えてくるはずです。今は逆境におかれ、病気であるとか、年齢であるとか、不幸な出来事がかさなっていたりして、まだそういう心の準備ができていない人も、今年は一人でも多く、生存実感を味わえるようになっていただきたいな、と年の初めに思うしだいです。