イチローが45才でついにリストラされました。そして申し合わせたかのように、名だたる有名企業が一斉に45才以上をターゲットにして数百人規模のリストラを発表しました。

NEC,カシオ計算機、パイオニア、富士通など電機各社をはじめ、千趣会、光村印刷、アルペンそしてエーザイ等等。さらに表に出ていないだけで、外資の傘下になった会社では櫛の歯が抜けるように日々スリム化が進んでいます

45才から65歳まで、といった中には部長職でバリバリやっていてキャリアアップのために転職しようかと思っていたところにわたりに舟、なんてことはまずありませんで、八割型は再就職困難組となります。

この世代の人たち(45-54歳)はバブル逃げ切り組、と見られがちですが、全くそんなこともなく、大卒で働いていた人の多くは、バブルの余韻に触れることはできたものの、大半は理不尽な上司に悩まされ苦しんできた30年間です。

55歳以上の本当のバブル逃げ切り組の人たちはメンタリティから思考回路から全く違います。したがって晩発性の場合を除いてうつ病になりにくい、好き放題やってこられた人たちです。

55歳以上の、元部長、元事業部長、元社長、元政府高官、元教師などを見ますと、例外はあるにしても、およそ現在では通用しない価値観を持ち、あるいは人間的にもマナー的にも「必要ない」おっさんたちです。

ここまで社会性がないのか? ここまででたらめなのか? ここまで事務処理能力がないのか? ここまで相手の気持ちをおもんぱかることができないのか? 驚かされることが多々あります。

知識量、創造性、想像力、実務処理能力は虫けら以下といっても過言ではありません。ちょっとできのいい中国人の留学生と比べて勝ってると思えるところ、尊敬できると思えることがまずありません。

本当にごく少数の人たちが、自発的に動くことができ、オールラウンドに活躍していた人たちもいるのですが、本当に少ないです。日本の人材不足は未来への希望を完全に打ちくだいてしまいます。

たとえば医者の五割はバカです。教師となると、9割9分社会性が欠落しています。教育者として、以前に人として問題が多々あります。忙しすぎる職場が彼らをどんどん世の中から乖離させています。

45才から54歳までの人たちはバブル世代の被害者です。バブル世代のボリュームが大きく、能力がないのに出世したためこの世代の人たちは課長にすらなれない人が続出しました。

また、マネジャーになれたとしても、就職氷河期が続いたことから、部下をマネジメントしたことがない、実務経験のないマネジャーが多かったのです。そのためほとんどは即戦力として役に立ちません。

50歳以上の人たちは良い学校を出ればよい就職ができて終身雇用で生涯年収3億円が約束されている、はずの世代でした。会社は30代中盤で結婚しない人を笑いものにし、出世をさせないようにし、高卒や高専卒と変わらない、生涯賃金2億円程度となりました。

50歳以下の人はさらに悲惨で、いきなり就職氷河期であり、受験戦争はあったけど、良い大学を出ても就職がなく、就職浪人的に大学院に行ってみたが、大学院生はつかいづらい、とかめんどくさい、と言われて結局正社員になれない例が続出しました。

派遣社員や孫請けのブラックな会社に飛び込み、一時期「地域正社員」などという、大卒新入社員(プロパー)ではない形の、制限付きの正社員、給与体系の違う正社員という形での採用がされそのうちの数割は正社員になれたとしても今回リストラに遭うのです。

派遣社員時代は年収250万円で使われ放題でしたから、45才で切られてしまうと、生涯年収は2億円どころではありません。下手すると1億円も切ってしまうことになるのです。そんな馬鹿な話はないでしょう。

50歳以下の社員の辛いところは、まともな研修を会社が行ってこなかったところにも問題があります。景気が悪く、人材採用を控えたくらいですから、人を育てよう、となりにくかったのです。

本当は人が少ないからこそ、その質を高めてアウトプットをたくさん出しましょうよ、仕事の精度を上げましょうよ、というのが良質な経営なのですが、バブル出世ボンクラ経営陣は目先の数字にしか目がいきませんから、社員を使い捨てにする傾向が強くなっています。

パソコンがまともに使えるか、というのもけっこう複雑な問題です。どの世代でも2割程度はかなりパソコンが使えます。しかしながら、50歳以上は一本指打法でタラタラ仕事しても何もとがめられることのなかった世代であることは間違いありません。

もちろんそうではない職種や職業はあったにせよ、大企業の一般事務となると、本当に驚くほどアウトプットが低く、一時間かかってようやくゴルフコンペのメールを一通打てるくらいの人がざらにいました(業務時間中にゴルフコンペのメールを打つなよ)。

パソコンの使い方研修をきちんと行うような会社は非常にまれでした。会社全体で生産性改革をしているところも稀でした。

そのためブラインドタッチで百五十文字ぐらい打てるのは秘書検定を受けたような人と、一生懸命独学で勉強した人に限られ、ほとんどの人はそれすら無理でした。

コンピュータプログラムはパソコンではない時代にIT企業がこぞって半年間の研修をしたものです。コボルとかフォートランという言語ですが、現在ではほとんど役にたたなくなってしまいました。

ほとんどの人はコンピュータを独学か、自腹で教室に通ってならったものですが、コンピュータ言語も次々と覚えていかないといけない無間地獄のような世界になっています。

ただ今回のリストラ世代のほとんどは、何しろ上の世代の人にコバンザメのようにくっついて、顔色を窺っていれば出世もできたし給料も上がった世代なので、給料に見合うアウトプットや、若手と同じだけの働きを期待する場合には足枷でしかありません。

しかしそうはいっても、好きでそうなったわけではなく、上に正しいことを言っても会社の利益になる提案をしても、「先輩の顔に泥を塗る気か?」「生意気いうんじゃねえ」と潰されてきた世代がまさにここなので、本当に気の毒としかいいようがありません。

55歳以上団塊の世代下までの「暗黒の世代」の上の人たちからは、「いずれ君たちの時代が来るから」と球拾いをさせられていたというのに、ついにその時はこないまま会社を追い出されてしまうのです。

彼らに会社は非常に厳しいことをいいます。「アウトプットが不足している」えーだって、そんなのどうだっていいじゃん、ていってたじゃない。

「スキルが足りない」。スキルを磨くように会社が育てなかったしジョブローテーションという古い考え方のもとに技術をみにつけさせてこなかったじゃない。

どう抗ってもほとんどムダなのです。なぜなら、各社、人材派遣会社の大手から「追い出しマニュアル」という秘伝書が配られているからです。

この人材派遣会社は、辞めさせた人材の代わりに自分のところから派遣社員や期間社員を雇ってもらうことがビジネスになるため、終身雇用制をなんとかして打破したいのです。

結局、辞めざるを得なくなるわけですが、再就職は非常に困難です。何しろ世の中じゅう年収280万円前後という人たちだらけになってしまっているのですから。

ほとんどの45才以上の人は年収280万円で暮らしていた時代もありますが、もう暮らすことができません。

この世代は、親世代の「人生のステップ神話」をうのみにして育ってきてしまったからです。先ほどの、「受験戦争に打ち勝ち良い大学を出て良い就職をすれば生涯賃金三億もらえる」というのもそれです。

25歳で結婚し、30歳で子供が生まれ、35歳でフラット35でローンを組んで家を買い、同時に課長昇進。45才では部長になり、55歳では運が良ければ事業部長に昇進、というようなやつです。

ところが、実際にはその設計図はしょっぱなからつまづき、多くの人が結婚は30過ぎ、子供が生まれるのが40過ぎ、家を建てるのもそのくらい。そして、60歳でも子供は大学生で一番お金がかかり、家のローンも完済できない。

子ども一人に一千万円かかる、と言われたのはもう10年以上前です。今は二人で三千万円くらいかかるでしょう。ところが、60過ぎの暗黒世代の部長はそんなにかかりゃあしないよ、と澄ました顔で言うのです。

親の暗示にかかったり社会の暗示にかかったりするような人たちは、血も涙もない不動産屋の口車に乗って、一番年収が高い時に、給料の二割なら無理なく払えるから、とマンションを買ってしまったりするわけです。

だいたい年収が800万円を超えると(今は500万円であっても)たいていの耐久消費財は買えてしまうので、貯金も1000万円(2000万円)超えたし、家でも買おうか、と考えるようになります。

そして、月に12万円安物のマンションを賃貸するより、月に15万円ローンを支払った方が、より高級な資産としても残るマンションが買えますよ、という使い古されたセールストークにあっさりひっかかるのです。

30年ローンで、5000万円のマンションを6000万円ちょっとで買う契約をいつの間にか結んでしまうわけです。しかし、実際には固定資産税、修繕積立金、管理費、というのが、月額換算で5万円くらいかかり、毎月維持するだけで20万円、光熱費やインフラ費用でもう3万円。

手取りが40万円あったとしても、子供や老親の介護、あるいは車の維持費などがあると、生活はカツカツというところです。

リストラに遭うと給与の8割弱が失業給付金として払われますが、ギリギリで生活していると、貯金をとりくずすことになります。

その貯金も、マンションの頭金に入れてしまっているので、リストラになった瞬間に、6000万円で購入したマンションは、3年しか住んでいなくても元が5000万円で買った瞬間に1000万円消えるので、うまく売買できたとしても3500万円程度にしかならず、5000万円以上残っているローンを返済しても、2000万円近い借財が残ります。

こうした人は、年収をキープしないと破産への道を進むことになるのですが、そもそもなんの社会的スキルも身に着けていないためよほどのコネがない限り、年収400万円前後の仕事が見つかればまだよい方、ということになります。

一般的な日本人の生産性を考えると、パソコンもそんなには使えない、他人と話をするのが苦手、事務処理能力も高くない、相手の気持ちが理解できない、洗脳されやすい、技術らしい技術を持たない、となると時給1500円で年2600時間働ければ本当にラッキーです。

あらゆる技能を身に着けても時給2000円にはなかなか届きません。その人のために1時間5000円払うような人がたくさん現れないと時給2000円は不可能なんですね。

子どもがいて理不尽な借金を背負っている人はそれでもなかなかあきらめることはありません。実家の力などを借りながら少しずつ生活を立て直していきます。そして、子供が社会人になるまではなんとか頑張ろうとします。そして頑張れてしまいます。

しかし生活が破壊しつくされてしまった人、転職がどうにもうまくいかなかった人、自分を改造するのに失敗した人、そして、ある程度なんとかしばらく食べられるだけのお金を持っていた人は引きこもりになりがちです。

こうした場合、もはや救出は困難です。親の話していた神話は裏切られてしまったため、親との信頼関係の断絶がおき、しかし同居せざるを得ない。

プライドが邪魔をして、若い人たちと最低時給の仕事をする気になれない。もう一度学生時代に戻って仕事をするという気になれない。なぜなら、少しばかりの資産があるから。

こうした人たちを救出することは、とてもとても困難です。本人に危機意識がありませんので。ただ、本人はそう不幸に感じているわけでもないんですねえ。

私どもは、誰かの希望のために動くので、どなたも希望されていない場合は動くことができないのです。そのあたりの強制力というのは、今後も難しいところでしょう。

確かに働く能力がありながらぶらぶらして仕事をしない、というのは法律違反でもありますし、国として生産性が上がらないので将来的に困っていく方向しかないのですが、いかんせん、スポーツ選手でもないのに45才でハシゴを外して、はい、それまでよ、と宣告してしまうのは、もともとがそういう社会ならいざしらず非情なのではないでしょうか。とても納得できるものではありません。