家族の生計が親の残存貯金と二ヶ月に一度振り込まれる年金だけ、ということになると、預金凍結の可能性を考え、ある程度の現金は手元に置いておきたいものです。
例えば親が不慮の事故や、突然の病気で亡くなった場合、役所への届け出が行われるとふだんちっとも役に立たないあのマイナンバーというやつのせいで銀行の口座が凍結されます。
また、認知症と診断されると、それにより銀行口座の凍結が行われます。むしろ怖いのはそちらの方です。銀行口座が凍結されると、クレジットカードやスイカやPASMOといった交通系オートチャージカードなども引き落とせなくなり、というより、少額のものは引き出せてしまうのですが、月末などに引き落とせなくなり、突然「悪質な債務者」ということでブラックリストに載ってしまいかねません。
クレジットカードだけではなく、インフラ系、つまり、電気、ガス、水道、電話、携帯電話、NHK、新聞、さらには保険や自動車のローンなど、クレジットカード払いではなく口座振替(口座自動引き落とし)にしているものまでストップし、債券となって雨あられのように振ってきます。
基本的には親名義に「親展」のような郵便で最初の督促が行われることが多いわけですが、親がどのような金銭管理をしているか、というのは子供たちの知るところではないいっぽう、親と同居している場合には本来、インフラ系の支払い義務はありますから、これを処理しないと大変なことになります。
一般に、水は命に直結するから、ということで、なかなか止められることはないとはいいますが、それでも半年も放置すれば止められてしまいます。それ以前に、冬場に電気や水道を止められると命にかかわります。
築60年を超えるような木造家屋ですと、断熱材などどこにもなく、夏は涼しい物の冬場は雨風を防げるだけで、気温は外とほとんど変わらないような住宅が東京には今もふつうに立っています。
壁は竹こまい、といって竹を編んで柵のようにしてあるものに泥を塗り付けた土壁というものです(少し時代が新しいと、コンパネというベニアの厚いものを入れて、そこにラス網という針金のネットのようなものを張り、その上から泥を塗ったくった場合があり、若干防寒性能が上がります)。
床は畳を剥がすと、根田板が貼られています。これも古い時代の場合は板と板の間に隙間がありますが、時代が新しくなるとベニア板になり少し防寒性が上がります。しかし、その板をめくると下はいきなり土です。
サッシは木で、木はアルミサッシより熱伝導率が低いから寒さに強い、とはいいますが、実際には大きなガラスがはまっているものではなく、隙間だらけで断熱性はどこにもありません。
ホットカーペットと湯たんぽ、そしてあたたかな布団で暖を取る事になりますが、断熱性がないため、暖房を入れないと室内温度2度ぐらいになってしまいます。そんな状態で、電気ガスを止められたらお湯も出ませんし生活も成り立たなくなります。
かといって、こうしたインフラ費用だけで月1万円はしますし、上に述べたようなさまざまな引き落とし現金があったならば、手持ちに現金がなかったならば、あっという間に生命線を失うことになります。
「いざ」という時にどうするか、というのは、保険に入っても解決しません。あらかじめ家族で相談しておくことです。どこにいくらのお金があるのか、生活していくのにどれだけのお金が必要なのか、あらかじめ考えないといけません。
妙に小金を持っている人に限って、そうしたことを秘匿しがちであるため、家族の誰もリカバリーが取れないことがあり、そうした場合に初めて連絡を頂いても、そうなると私どもも手の打ちようがありません。
借家であれば賃貸料が、保有財産であっても固定資産税などが容赦なくふりかかってくるわけですし、場合によっては減免されたり、支払いを遅らせる手続きなどもありますから、前もって話をしておくことが重要なのですね。