8050問題はひきこもり問題の終着点、という議論があります。私はその意見には賛成しませんが、ひきこもり問題について見解を述べたいと思います。

ひきこもりの子を肉親が殺す事実

8050問題に限らず、たとえば学校のイジメなどでも子どもは登校拒否になり、精神を患い、家から出られなくなることがあります。親は引きこもりになる予兆を捕まえ、転校させるとか、関係者と相談するとかいろいろな方法があったはずですが、子どもが非可逆的状況になってから慌てる「ダメ親」が多く、何しろダメ親ですから傷口を広げてしまいます。

引きこもりは、重篤な状態であると、風呂や食事もめんどくさくなります。ちょっとした物音にも非常に敏感になります。うつ病になる人は知能指数が高いか、少なくともマジメな人が多いですから、そうでない人よりあらゆることに鋭敏になりがちです。

その一方で自分は自分で見ることができませんし、必要以上に自分をダメだと洗脳されてしまっているため、常に責められているように感じます。しかし、リアルな理解者はどこにもおらず、理解者として近寄ってくる人やお医者さまも助けてくれないので人間不信に陥っています。

人間不信の際たる相手が、何を隠そう、肉親や兄弟なのです。自分がそういう状態になるまで、さまざまな信号を自分なりに出していたはずなのに、それをキャッチするどころか、説教をしたり、的はずれなことで文句を言われたり、肉親であることをいいことに痛いところをつくからです。

ひきこもり、という状態は、文字通り首の皮一枚、人間であることを保っている状況です。自分自身すら自分自身を味方できないような状況にあります。

ところが肉親は「五体満足なのに、あなたより身体が悪い私達とか、世の中には不幸な人がたくさんいるのよ、何、贅沢なことを言っているの」と言ってしまいがちなのです。多くのひきこもりは自己防衛本能に従って、その言葉を受け止めないようにしていますが、たまたま受け止めてしまうと、あとは悲劇にしかなりません。

あなたは答えを知っていますか?

重篤なひきこもりは、自分自身ですら自分の味方ではありません。親は口先では味方だ、と言っていますが、実際問題何も手助けしてくれていませんから、味方にも思えません。

ひきこもりは、自分がどう変わればいいのか、どうしたら友達ができるか、誰か助けてくれる人はいないか、今後どうやって生きていけばいいのか、悩み、苦しみ、戦い、困っています。

彼らを助ける方法はいくらでもあります。ご連絡いただければ。長くカウンセリングを行わないと、答えをみつけることが難しいです。誰にでも通用する答えなど存在しません。

答えを見つけられても、誰がそれを言うか、それは大きな問題です。

ある時、「ひきこもりの息子を助けてくれないか」という依頼で伺ったことがあります。しかし、テーブルを挟んで、親も同席し、彼はおよそひきこもりらしからぬ服装でした。

ヒゲも一応剃られ、髪の毛もセットされ、外出するような服装だったのです。聞いていた話と全く違いました。嫌な予感は当たりました。うつろな目をしていたものの、私の質問に、なにか答えたそうな、目に光が出た次の瞬間、母親が先回りをして答えを言い始めたのです。

おそらく、無理やり、風呂に入らされ、ヒゲを剃られ、髪の毛をセットされ、外出着を着させられたのでしょう。自発的には何もさせてもらえない、幽閉状態です。こうした環境にあるひきこもりを助ける方法はありません。

親のガードは非常に固く、彼の話を聞きたいから、二人きりにしてほしい、とお願いしても、「お金を出すのは私達だから」と譲りません。また父親は「かまってちゃん」で、結局ほとんど会話ができませんでした。

実はサインを出しているひきこもり

ひきこもりで困っている人のサインは千差万別でしかも弱々しいので、ほとんどの人はサインを見逃してしまいます。たとえば「親と同居しているんだよ」というつぶやきは「SOS」のこともあります。

40歳過ぎて親と同居している、というのは、かなり不健康なことです。20代でも、心がつぶれかけている場合があります。アベノミクスにより数字はいじられていますが、社会構造的に失業者で溢れている現在、親元を離れて自立して生活できるだけの収入を稼ぐことは並大抵ではありません。

しかし、テレビや新聞というオワコンなメディアしか見ていない「心が老人」の人たち、老害は、昭和バブルがまだ続いているように錯覚しています。

多くの商店街は壊滅し、「個店」と呼ばれる独立してお店をしている人は、飲食店であれ、物販であれ、仕入れ原価で大型店やフランチャイズに負け、何より世の中の老化が進み、冗費が減り、財布の紐が硬い人ばかりになっていますから、今後はフランチャイズもどんどん消滅するでしょう。

高齢化のスピードが、急坂になると、可処分所得は崖になります。人手不足が深刻化しているのをさまざまなくだらない政策で埋めようとしていますが、「現場の目」を持っていない官僚や政治家が決めてしまうので、もはや「働いたら負け」に近い状況になりつつあります。

私なぞは、本当に多くの若者たちが「助けて」のサインを出しているのに気づいてしまうのですが、逆に私のような人、が本当に枯渇していることに絶望感を持ちます。

子どもと同居していながら、自死してしまったり、事故にあってしまう子供の数はとてつもなく多いです。そういう子どもたちは、必ずサインを出しています。そもそも同居が不健康な状態だという自覚が足りない親御さんが多すぎて、絶望的な気持ちになります。

ひきこもりに親の介護は無理

「ひきこもり」と「同居」は分けて考えないといけません。節度のある同居であれば問題ないのですが、「ひきこもり」状態にある場合、これは、実は親御さんが一人きり、という場合も同じようなことが起きるのですが、お子さんに介護を期待しないほうがいい。ほぼ無理ですから。

同居して、養ってやったんだから、介護で恩返しするのが当たり前だろう、という考え方が実に自己中心的であり、傲慢でしかありません。世の中、そう、あなたがたの思うように動くわけではありません。

ひきこもり、というのは、先に述べたように、自分にさえ自信がなくなって、社会との健全なコミュニケーションを断ってしまっている状態なのです。それも自分を守るためにそうせざるをえなくて、ワガママで、とか好きで、ではなく、不可抗力なのです。

自分のことで精一杯の人は他人を思いやるということができません。本当にそれどころではないのです。何しろ、ご飯も食べられない。身体が臭くなっても、そのことまで気が回らない状態にあります。

「元気を出せ」などと言う、本当に愚鈍な人がいますが、ひきこもりが元気を出したら電車に飛び込んでしまいます。そうできないように、精神薬で元気を奪う、キシネンリョといいますが、自殺願望を捨てるようにコントロールするのです

介護をする、というのは、ペットの面倒をみるのとはわけが違い、高度な技術が必要です。まして、認知症となると、家族の生活はめちゃくちゃになります。

社会性が全くない引きこもりが、役所に相談したり、地域包括支援センターに連絡をとったり、ということが急にできるようになるでしょうか? 人混みが苦手な人が、電車に乗って、役所までたどり着くことができるのでしょうか?

兄弟や親戚に引きこもりがいる人は、「同居してるんだから面倒を見てくれるだろう」と無責任に考えてはいけません。ことにそれなりの資産価値のある土地建物を親が所有しているようであれば、突然税務署から3000万円支払え、というような通達が来る結果を招いたりもするのです。

地域包括支援センターはおろか民生委員、あるいは近所の人にすら相談することなく、腐乱した死体をそのままに別の部屋で餓死するようなことが本当に起きているわけですから。

どうも日本人はすぐ、オールオアナッシング、白黒思考をする人が多すぎる感じがしますよ。家のメンテナンスと同じことで、家族血縁関係になにか問題があるならば、必要な手を適切に打っていれば、突然生活を全部奪われるようなことは起きないのですけれども。

特に男性の生命力、生活力のなさは問題が大きいと思います。「仕事が忙しいから」と、家庭も自分の健康もおろそかにして、「職場の飲みニューケーション」とか「つきあいゴルフ」でいい気になっている。そうした人には大なり小なり天罰は下ってしまうでしょう。本当に残念ですが。