引きこもりが起きやすいご家庭というのは確かにあります。もちろん100のご家庭があれば100の事情があり、かんたんにわりきれるものではありませんが、プライドが高すぎるお父様にお目にかかることが多いな、という印象があります。
プライドが高いものですから、引きこもりを「家の恥」ひいては「自分の恥」と感じ、なかなか私どもにSOSを出してくださらないのです。お子様も立派な社会人ですのに「恥の原因」呼ばわりされてしまっていては、なかなかふつうの人間関係を作ることは難しくなります。そして家庭ですら普通の人間関係が作れない状態では、社会で他人との距離感を測ることは非常に困難になります。
好きで引きこもりを始める人はほとんどいません。きっかけには、お父様世代にはなかなか理解しがたい挫折や人間関係の破綻という悲しい出来事があり、それも長時間ヒアリングを行うことで初めて挫折の原因にたどりつくこともあります。
プライドの高い保護者のかたは、つい、起きてしまったこと、あるいは今起きていることだけに目をむけてしまいがちです。しかし、特にひきこもりの長期化の原因は簡単なものではありません。
プライドが高いお父様は、会社においても責任感が強く、ワーカホリックのようになり家庭を顧みることなく働くのが当たり前、という方もいらっしゃいます。会社としてはそういう人もいてくれないと困るわけですが、お子様にとって父の不在というのも精神的には不安定になるのです。
特に業種や職種によっては会社の中では冷たい人間関係しかないところもあり、それを家庭に持ち込む方もいらっしゃいます。ただでさえ「世間の風は冷たい」中で家に戻っても家族から冷たくされるようでは、心が破壊されてしまっても当然ではないでしょうか。
そうしたお父様は、つい「自分がふがいないと感じる」お子様に向かって「ふつうの人のようにできないのか」と心無い言葉を発してしまうことがあります。本人には全く記憶に残らないこうした言葉は心に爆弾を抱えているひきこもり予備軍のかたの心に鋭く突き刺さります。
よく「親がだらしないから子どもが引きこもりになるんだ」という流言飛語があります。私どもはむしろ逆だと考えています。親が立派すぎるから、子どもは自分を見失いやすい。子どもに成長を期待するのは親の常ですが、ただでさえ立派な「俺を超えてみろ」という励ましの言葉は無理ゲーなのだということを理解していただきたいものです。
今夜はここまでにしておきます。