この国の無策ぶり、というのは、万死に値するものがあります。購入時にフリーになっているクッキーを停止しようという動きが出てきました。これにより、インターネット企業は大ダメージとなり、多くの失業者が出て、ひきこもりの数が爆発的に増えてしまうというのに。

クッキーを知らない偉い人

クッキー、といのはインターネット用語で「閲覧履歴の記録」をさします。セサミストリートで出てきたクッキーモンスターとは何も関係がありません。食べるクッキーではありませんが、ネットスラングでは「クッキーを食らう」という言い方もします。

インターネットには本来の技術用語があり、英語は音が似ていて違う意味の言葉や、同じ言葉なのに日本に入るときに違う言葉に訳されたものもあり、昔の人だからといって皆が賢いわけではないため、混乱するのはわかりますが、きちんと調べればわかることなのにそれをしない怠慢な世代が世の中を牛耳っているので、「クッキーなんかやめてしまえ」となるわけで、本当に困ったことです。

たとえば、オーラ、とオーロラは同じ言葉です。あの人にオーラがある、というのは、オーロラのようなものが見えるという意味なんですが、日本語として違うので、めんどくさいことになります。

またクラシック音楽、という言葉は「クラッシック音楽」と発音するのが一般的で、表音文字とされるカタカナ語さえ、表音文字ではない、という日本語の厄介な面があります。

キャッシュといっても現金ではない

たとえば「キャッシュ」という言葉があります。昔は、検索エンジン(ヤフーやグーグルの検索窓)に調べたい言葉を入力すると、検索結果意外に「キャッシュを見る」という表示が出てきて、重宝したのですが、「これは金がかかるのか?」という阿呆な人があまりにも多くてめんどくさいので、今は、ふつうの人に見られないようになりました。

この「キャッシュ」というのは「過去の記憶」なんですね。検索エンジンは、なにか、言葉を入れたら、そこから全世界のインターネットをさがしに行くのではなく、一日に一度とか、全インターネットで検索エンジンが見てもいいよ、と許可しているものについて、全部暗記して、あらかじめ、検索キーワードとなりそうなもので、分類して保管してあるのです。

データベースのインデックス作業、と呼びますが、それが自動的に行われています。だから、あっという間に表示されますし、最近では数時間前の記事も表示されるので、技術の進歩はめざましいです。

そのいっぽう、昔は、数日前とか数ヶ月前のホームページにあった情報で今は抹消されている情報も検索することができたのです。それが「キャッシュを見る」ということで、現在はサーバー契約がなくなっていたりしているものでも、あるていど、文字データだけ、とかはしばらくの間みることができたり、コピーして保存することができたのです。

しかし、一般的には、古い情報のほうが不正確ですし、また、例えば犯罪者の実名など、出してはいけない情報が残っていた、ということもあったりということもあり、本来、インデックス作業自体が「コンテンツ泥棒」でもあったので、今は規制なのか、情報量が多すぎて昔のものを保存しておけなくなったのか、まあ、少なくとも誰でもかんたんに見られる時代ではなくなりました。

ただ、実際のところは、インターネットは何千億ページのデータを全部毎日一生懸命読み込んでいるわけではなく、前日とか数時間前の差分を読み込むようにしているので、「コンテンツ泥棒」をしなくなったわけではありません。ただ、利便性のほうが、法律を上回ってしまった場合、利便性が優先されてしまう、という現象なんですね。

それはいわば、「やったもん勝ち」であり「正直者はバカを見る」でもあり、「先行者利益」でもあります。

日本語では現金と区別するために、このインターネットの過去の記憶のことを語尾上げで「キャッシュ」と言っていましたが、現在はどんなカタカナ語も固有名詞も語尾上げが主流になってしまったので、より混乱するようになってしまいました。(ドラマ、とか)

クッキー制限で消費者が困るもの

クッキーにより、消費者は、毎回パスワードを打ち込まなくてもよかったり、閲覧したページを履歴をみることでかんたんにさがせたり、ワンクリックでお買い物ができたり、と、便利なことは多かったのです。

そのいっぽうで、他人がパソコンを覗き見すると、前にそのパソコンを使った人がどんな趣味嗜好なのかがバレてしまったり、あるいは、メールに自動ログインできてしまって、秘密の家族の会話などが丸見えになる、など弊害も出ています。

しかし、「運転免許がない人は車を運転するな」という話と同じようなことで、誰でも無許可でパソコンが使えるような、あるいはスマホが使えるような状況こそが異常事態としかいいようがありません。

なぜ公取委が禁止するのか

昔から言われていることですが、「インターネットにジャロはいない」なんですね。インターネットには、悪意のある嘘やでまかせや、無責任な批評批判が出回っています。

1980年代のワープロ通信、パソコン通信から単を発した、NIFTY-Serveの時代には、パソコン通信をしている人は、IQ120以上、紳士淑女が殆どで、それは、パソコン通信をするためには、数十万円という初期コストがかかっただけではなく、技術にもある程度くわしく、またランニングでも月数万円必要だったため、本当に限られた「上流」の人がほとんどでした。

そのため、ホームページを持つこともステイタスであり、その情報も非常に正確性が高かったのですが、今は3歳の子供でもブログをかけるようになってしまったので(あるいは90歳を超えたひとまでツイートするようになった)、情報の不正確性が高くなりました。

なぜ嘘が蔓延するのか

たとえば、ネットの「クチコミ」はとても重要でしたが、ライバル店やライバル業者などが、極めて悪意に満ちたクチコミを入れることで、自助努力、学習や修行や作業をすることなく、安易にお金儲けをしようとするようになりました。

あるいは、本当に正しいことよりも、本当らしい嘘のほうが魅力的に感じるため、承認欲求が高い人たちは嘘の情報発信を続けるようになりました。

本当は詐欺で大金持ちなのに、公園でカップラーメンを食っている写真をアップして「私は今はこんなに落ちぶれてしまいました」などと書くのです。

40代以下の人たちにとって、インターネットの記事は「釣り」というレッテルがはられています。嘘やインチキで釣って、自分の金儲けの材料にしようとしているだけだ、だから全く信用できない、というわけです。

私どもも、本当に正確な情報はネットで流せなくなってしまいました。正確な情報を書いても誤解されたり、訴えられたりするからです。たとえば、クライエントのことは一切かけません。8050問題やニート引きこもりの実例集のようなものを出版する人とかいますが、秘密保持義務をどう考えているのでしょう。

「仮名」だけでなく、相当部分フィクションで設定を変えないと、ほんとのほんとの実例は個人特定がされてしまった場合、大変なことになるので、結局のところ「嘘の情報が独り歩き」なんですね。

ネット規制がかけられない公取委

公正取引委員会がネット上の嘘や、優良誤認情報を取り締まれないのはさまざまな理由がありますが、一番大きな理由は「前例がないので何もできない」ということです。お役所というところは前例主義なので、前例や先輩が決めたことに逆らえない、という大きな問題があり、そこが足かせになっています。

クリミナル・マインドのおばちゃんのように、元ハッカー、みたいな人が政府機関にぞろぞろいて、さまざまな取締を行ったり、犯罪解決に役立てている、というのはファンタジーであり、スマホもろくに使いこなせない人が大半の社会で、熟練のコンピュータ技術者は冷や飯を食わされることこそおおくあれ、なかなか肩身が狭いところです。

ネットを監視し、優良誤認や詐欺を片っ端から捕まえられるだけの人員はどこにもありませんし、そうしたプログラムを開発する機運もありません。かんたんなのは、「便利な機能に規制をかけてしまえ」というわけです。

クッキーが使えないと何が起きる?

クッキーが使えなくなると何がおきるのでしょうか? まずアフィリエイターと言われる人たちが壊滅的打撃を受けます。アフィリエイトというのは個人や企業のホームページに広告窓をもうけ、検索エンジンが見ている人の嗜好に合わせた、見ている人が興味を持ちそうな、あるいは今現在興味をもっていることに一番近い広告を表示する、という仕組みです。

つまり、同じホームページを見ていても、たとえばお年寄りにはルーペの広告が出ていても、若者には化粧品や自動車の広告が出ていたりするのです。しかし、ほとんどのお年寄りは、誰もが同じものを見ていると思い込んでいます。新聞ですら、地域版とか、刷る時間帯によってすこしずつ記事の内容が違うのに、生まれたところから動いたこともなく、知恵もない人は、「新聞に載ってたよ」と未だに小馬鹿にするように他人をなじったりするのですが。

何しろ朝日新聞の発行部数と実販部数ですら、もはや数十人に一人しか新聞をとっていない、という状況ですので。それは若者と意見が合うはずがありません。しかも何も取材しない、なんら意見を述べない、結論も方向性もない、ただ「こういうことがある」という大本営発表を無批判に垂れ流すだけ。

しかし、そうした昔からあるメディアに対しての規制はとても厳しいのです。ところがインターネットは、だれでも電車賃くらいでホームページが作れてしまったり、本当に月々のスマホ代金だけでたくさんの嘘の情報発信ができてしまうため、とてもとても取り締まれない。

でも、「釣り」アメリカでは「トロール」。これは森の妖精ではなく「トロール漁船のトロール」なのですが、要するに釣りなんですが、今までユーザーがどんなページを見てきたか、の情報が取れなくなると、ユーザーが食いつきそうな広告を検索エンジン会社が表示できなくなるのです。

時計の針が10年くらい巻き戻ってしまって、皆が個別にさまざまな企業と契約を結んで、その企業の広告を作る、というものしかなりたたなくなってしまいます。

しかし、その方法では、一ヶ月に10万円、20万円稼げていた人も数百円しか稼げなくなってしまいます。独立自営的になりたっていたのが、廃業に追い込まれるわけです。

もっと深刻なのが「広告モデル」という収益方法で稼いでいたITネット企業です。広告収入がなくなったとたんに破綻します。ものすごくたくさんの失業者が出て、その受け皿が存在しなくなりますから、引きこもりが増えることになります。

そうしたチェーンリアクションが容易に想像できる人が、この国の中枢にも新聞社にもいない、というのは大変に困ったことです。結局、消費者が割を食うことになってしまうのに。