スーパーに寄りましたら、お寿司のパックに「お寿司でハロウィン」というステッカーが貼ってありました。全く意味不明です。中身はいつもとなんら変わりありません。これでは、中途半端な観光地の「名産緑茶」、実は静岡産、というのと変わりません。

なんでもかんでも特産品、と貼ってしまえ、という了見です。あまり良い了見とは言えません。関東の産地直売売り場の店に行くと、とうもろこしとか、パイナップルが置いてあったりして、「へぇ、このあたりでもいろいろ栽培しているのかぁ」と思って、値札を見るとトウモロコシには「北海道産」、パイナップルは外国のです。

ありていに言えば、詐欺ですよ。産地直売といえば、新鮮なものが置かれているだろう、という消費者心理につけこんで、いつ獲れたかわからないものを売っているわけですから。

もちろんお店にはお店の事情があるのでしょう。事情というより浅知恵と言った方が的確かと思いますが。産地直送だと八百屋さんらしくなくなってしまう、品ぞろえを良くしないと、という心理です。それではかえって埋もれてしまうだけなんですけどね。

以前、街の小さな魚屋さん、間口一間、といってお分かりになるかどうか、小さなシャッター一枚分、鰻の寝床みたいな小さな魚屋さんなのに、サンマやブリのシーズンになると大根を置いている店がありました。サンマには大根おろし、ブリはブリ大根。お年寄りに便宜を図るために置いているのだと。

そういえば、築地市場は青物も扱っていました。青物、というのは江戸時代の野菜の呼び方ですね。江戸時代には、野菜はそんなに種類がありませんでしたし、豆は豆、カボチャはカボチャでそれぞれ棒手振りといって、てんびん竿に担いで売り歩かれていたのですね。

豊洲市場になってからは、魚と野菜は別のビルになってしまったため、両方回っていられないんだよ、という話も聞こえてきます。小さな魚屋さんができるサービスを東京都や東京タワーを建築した建築事務所まで考えていなかったという、すごく残念な話です。

いろんなお店を買いまわらなくていいことから、100円ショップが力をつけて、街から文房具屋さんや金物屋さん、刃物屋さん、ザル屋さんなどを廃業に追い込んでしまいました。

食料品で、肉も魚も野菜もということになると、どこにでもあるスーパーマーケットと何も変わらなくなってしまいます。でしたら、安いところで買う、という話にしかなりません。ここでしか手に入らないものがなければお店の価値はないのです。ところが、「産地直売」は看板とかノボリだけになってしまって、内容はできそこないのスーパーというわけです。

けっこう厄介なことに、この「詐欺の手口」は使えるのですね。「ハロウィンでお寿司」「産地直売」というキャッチフレーズに「いいね」しちゃう人が一定数いるのです。

「訳あり品」とか「半端モノ」、今流では「アウトレット」、さらには「見切り品」「お値打ち品」「数量限定」「期間限定」というラベルに日本人はとても弱いのです。

私がお店をしていた頃は、色々な実験をしてみました。300個仕入れたものがあったら、250個をふつうに販売して、50個を「訳あり」とか「数量限定」とか「お値打ち品」にすると、50個の方が値段が高くても売れ行きがいいのです。

日本人は嫉妬と差別の文化であり、ラベルにとても弱いのです。しかも、自分で貼ったラベルより、他人の貼ったラベルを信じるという困った人たちなのです。ですから「8050問題」も「8050」だよ、というラベルを貼られてしまうと、それで関心を持たれなくなってしまうかもしれません。

「8050問題」にはいろいろな8050があるのです。一つの処方箋で片付くわけではないんです。もう年齢とか状況に関わらず、8050だよ、とレッテルを貼られたら、良いことは何も起きなくなってしまうかもしれない、という危機感が私どもにはあるのです。