「オフ会」というものがあります。70歳代以上の方はご存知ないかもしれませんが、60歳代以下の方は「ふつうに知っている」、つまり一般用語です。ところが、このオフ会が現在の50歳代の人が知っているオフ会と変容してきており、別の社会問題となっています。

まず本来のオフ会を説明します。インターネット上あるいはインターネットを使ったオンラインゲーム上では友達をたくさんつくることができます。これは画期的なことでした。それまでは1万人に1人しか愛好家がいない趣味は、自分一人だけで楽しんで「変質者」呼ばわりされるか、もっとアクティブな人は書籍や同人誌を発行して、それを販売することで仲間を増やしていく、という方法しかありませんでした。

ところがアメリカのコンピュサーブの日本版として、富士通と日商岩井の合弁会社でニフティサーブというサービスができ、「ワープロ通信」「パソコン通信」というものが一般化、BBSと呼ばれた趣味に特化した文字だけの電子掲示板も乱立(主として猫などペット関係が多かった印象です。それは現在のホームページやインスタグラムみたいなものでも同様ですが)したのが1985年頃の話です。

当時は初期費用も高かったです。ワープロであれば13万円くらいのものから動かせましたが、パソコンはまだウィンドウズが出てくる前の時代で、40〜50万円ほどもしました。ワープロでもパソコンでも電話線を使うために工事が必要(一応自分で作業もできた)だったり、モデムというそれだけで5万円もする機械が必要だったりしました。

そのモデムも1200bpsとか2400bps(ボー、と読みました)つまり、一秒間に15文字しか文字が送れないものでした。今の一般的な光回線は公称100Mbps、実働でも12Mbpsぐらい出ていてハイビジョン映画なども見られてしまいますが、1万倍も速くなったのです。インターネットは月額3,000円くらいから高くても8000円程度だと思いますが、当時はアナログ電話料金なので、最低でも3分10円、一時間で600円するけれど、情報量としてはたいしたことがなかったのですね。

そのためチャット、当時ニフティサーブではCB(シチズンバンド)と呼んでましたが、仲の良い友達達とおしゃべりをしていると、月額数万円の電話料金になって大変な目にあったのです。しかし、それのおかげで、日本中にちらばっている1万人に一人の趣味の人と出会って心行くまでお話ができたのです。

意気投合した人と電話番号を交換したり、合う場所を決めて会合を開いたりする、それが「オンライン会議」に対して「オフライン会議」略して「オフ会」だったのです。この「会議」というのはニフティサーブの中で、細かく分類されている趣味のカテゴリを「フォーラム」と呼び、さらに細分化されたそのコアな趣味の小部屋を「電子会議室」と呼んだところから来ています。

つまり「オフ会」というのは「同窓会」とか「歓迎会」の会ではなく「会議」の略称だったのです。もちろん実際に会議をするわけではなく、ふつうにおしゃべりを楽しんだりお酒を飲んだり、という集まりだったのですが、「コアな趣味」「隠語を説明しなくても通じる仲間」の集まりでもありました。また「オンライン会議」の情報はログというデータベースで残っていたので、ログにあることの裏話などをして楽しむ場でもありました。

「オフ会」は誰でも開催できる、というものでもありませんでした。フォーラムに管理者がいて、管理者が許可を出したり、オフ会には管理者が参加したりもしていました。また、参加する人も、仕事用のパソコンで遊んでいる人は別にして、イニシャルコスト50万円、ランニングで月1万円出せる人たちでしたから、知識人階級も多く、それこそ紳士淑女の集まりといっても過言ではありませんでした。

とはいえ、本当に初期の頃はフォーラム数も少なく、音楽フォーラムのオフ会に参加した時は、10人もいない人の趣味がそれぞれバラバラで、「ロック」「プログレッシブロック」「邦楽(ニューミュージック系)」「ジャズ」「シンフォニー」「オペラ」で、すごく不完全燃焼だった時期もあったはあったのですが、そのうち音楽フォーラムだけで、非常にジャンルも広がったおかげで、よりコアなオフ会を楽しむことができるようになりました。

特に当時はなかなか画像をやりとりできなかったので、オフ会にいくと現物が見られる、コレクションが見られる、というような楽しみもありました。またアウトドアやキャンプ、さらには海外旅行のフォーラムなどでは、みんなで旅行に行く、キャンプファイヤーをやる、動物を一頭丸ごと調理する、などワイルドな企画もありました。

 

しかしながら、現在のオフ会、特に「地域オフ会」と呼ばれているものは、一昔前の自己啓発セミナーやお見合いパーティ的な危うさと罠があります。そもそも「オンラインで仲良くなって意気投合して」という過程が省かれているのですね。身元不明の人と、よくわけのわからない場所で、どういう下心があるかわからない怪しいパーティに出席する、というのはいかに治安が安全と言われる日本においても危なすぎるので危険を承知しておいていただきたいと思います。

というのはかなり前に潜入取材をしたことがありますので。あと、お見合い業者さんは知人におりますので。通常お見合いパーティ会場はレンタルホールかふつうのお店で行います。この時、男女同数もしくは女性の方が多く、男性の料金が5000円以上の場合、ほぼ間違いなく女性の一定数は仕込みやサクラとしてタダ、もしくは若干の分配金を貰って集まっている「パーティ専門業者」さんであり、ある種の風俗営業です。

お見合いパーティは、男性側にもサクラがいます。パーティ終了後にカップルが成立していないと盛り上がらないからです。カップルが成立すると有料入場者のリピーターが増えます。ですから、最悪の場合でもサクラ同士でひと組以上のカップルを成立させます。有料入場者であってもリピート率が高いと、サクラがたくさんいることが見破られてしまいますので、「不適切な行為をしたと親告があった」と出入り止めにします。

しかし、こういうお見合いパーティは比較的危険度は低いほうです。ただし、その場合であっても、絶対に「地域限定」として、自分が住んでいる地域のパーティには参加しないでくださいね。というのはストーキングされる恐れがあるからです。ストーカーには女性のストーカーもいますし、同性のストーカーもいますので、本当に注意してください。

ときどき、自分の飼っているネコやイヌの写真を見せびらかせる女性のかたもいて、ペット好きの人と友達になりたい、という気持ちはわかりますが、間違っても猫の写真データを渡したりしてはいけません。写真データにタイムスタンプやGPS位置情報が入っている場合があるからです。犯罪者は背景の窓の外の風景から、住んでいる部屋を特定します。

ストーカーの思い込みは激しく、人を愛する事は良い事だ、と思い込み、自分が愛する人は相手も必ず愛してくれる筈だ、と自分勝手に考えたり愛を成就するためには犯罪行為も許される、と思っている人もいます。さらに、昔の映画やテレビドラマは、今の尺度からは犯罪になるようなことを微笑ましいエピソードとして描いていたこともある、というのも見落としがちです。

いっけんふつうの飲食店で男女均一3,000円、冬は鍋だねオフ会イベント、などは本当に要注意です。そもそも知らない人と鍋を食べたいのかという問題もありますが、3,000円で食べ放題飲み放題、というと「良心的かも」と思えてしまうのです。鍋かどうかは大きな問題ではありません。注意して欲しいのは、その飲食店が、通常営業のスタッフでその会を運営しているかどうか、なのです。

飲食店によっては、定休日や、営業時間外に店舗貸しをするところが少なくありません。意外に知られていないのですが、特にバーやライブハウスなどは採算ラインが厳しく、オーナー自身がダブルワークするとか、オーナー自身が別事業でやらざるを得ず、バー自体はアルバイトに任せきりというケースもあります。

いずれにせよ、店舗を借りた「業者さん」が、ケータリングサービスなどを利用してパーティを開いている場合、一次会では何も起こりません。そして「業者さん」は利益が出ません。そして驚くべき事に、9割の人がカラオケなどの二次会に参加します。これは昔ながらの手口で、実際にはそのパーティの参加者のかなりの人数がサクラなのです。

そして、二次会でいわゆるねずみ講や、高額な商品の契約を取るのです。

私の場合は、高校の同窓会の人が、ぜひサシで会いたい、と言ってきて、あってみたら、一度はカルト宗教の勧誘、もう一度はマルチ商法でした。あとで聞いてみましたら、その人は同窓会に出ていた人を次々呼び出してはそのマルチに勧誘していたそうです。同窓会ですら現代はこのありさまです。「地域オフ会」には充分注意してくださいね。